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第2章 限定合理性と二重過程 ・ レッスン2-2

速い思考と遅い思考。二重過程理論とは

約5分 ・ 公開日 2026-10-06

このレッスンの問い

バットとボールは合わせて1100円。バットはボールより1000円高い。ボールはいくらでしょう? すぐ浮かんだ答えを覚えておいてください。

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン2-1から

Q1. 人が「最善」ではなく「十分よい」選択肢で決めることを何と呼びましたか。

答えを見る

正解: 1. 満足化
情報・時間・計算する力に限りがあるので、人は基準を満たした時点で決めます。これを満足化と呼び、サイモンが唱えました。

01頭の中には2つの思考がある

人の頭には、速く自動的に働く思考と、遅く努力して働かせる思考の2つがあります。

顔を見て怒っているとわかる。2たす2が4と浮かぶ。こうした判断は、考えようとしなくても一瞬で出てきます。

一方で、17かける24を暗算する、書類の数字を一つずつ確かめるといった作業は、ゆっくりで、集中しないとできません。

心理学者のスタノビッチとウエストは、前者をシステム1、後者をシステム2と名づけました(2000年)。人の思考をこの2つで説明する考え方を、二重過程理論と呼びます。

02日常の判断の多くは速い思考が担う

毎日の判断のほとんどは、速い思考がすばやく、たいていは正しくこなしています。

カーネマンは2002年のノーベル賞講演で、ほとんどの行動は直感的で、うまくいっていると述べています。身近な例でいえば、通い慣れた道を歩く、相手の声色で機嫌を察する、といった判断です。

遅い思考は、速い思考が出した答えを見張る役目も持ちます。ただ、この見張りはふだんかなりゆるく、もっともらしい答えはそのまま通してしまいます。

速い思考は欠点ではありません。すべてを遅い思考で考えていたら、一日が終わってしまいますよね。

03確かめないと、やさしい問題でも間違える

直感の答えを確かめずに出すと、バットとボールの問題のような簡単な問題でも多くの人が間違えます。

冒頭の問題で「100円」と浮かんだ人は多いはずです。でもボールが100円ならバットは1100円で、合計は1200円になります。正解は50円です。

ここがポイントです。元の問題(1ドル10セント版)では、プリンストン大学の学生の50%、ミシガン大学の学生の56%が「10セント」と誤答しました。答えを確かめずに出したのです。

フレデリックは2005年、この種の3問を、最初に浮かんだ答えを確かめる力を測る認知反射テストとして発表しました。職場で急いで出す見積もりや「今だけ」と急かされる契約こそ、一度立ち止まって確かめましょう。

速い思考(システム1)遅い思考(システム2)
速さ速い遅い
働き方自動的に、勝手に浮かぶ意図して、努力して動かす
負担努力がほとんどいらない努力と集中がいる
例顔から怒りを読み取る17かける24を暗算する
速い思考と遅い思考の特徴(カーネマン 2002年ノーベル賞講演の図1をもとに作成。「例」の行はこの講座で用意した例)

あなたの場合は?

最近、すぐに決めてしまって、あとで「確かめればよかった」と思ったことはありますか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 人の頭には、速く自動的な思考(システム1)と、遅く努力のいる思考(システム2)がある
  2. 日常の判断の多くは速い思考が担い、たいていはうまくいく
  3. 直感の答えを確かめないと、バットとボールの問題のように簡単な問題でも間違える

TERMSこのレッスンの用語

システム1System 1

速く、自動的に、ほとんど努力なしに働く思考。直感的な判断を生み出す。

システム2System 2

遅く、意図して努力しながら働かせる思考。計算や確認を担い、直感の答えを見張る役目も持つ。

認知反射テストCognitive Reflection Test (CRT)

最初に浮かんだ答えを確かめ、誤りに気づく力を測る3問のテスト。フレデリックが2005年に発表した。

LESSON 2-2 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. システム1(速い思考)の特徴として正しいものはどれですか。

答えを見る

正解: 1. 自動的に働き、ほとんど努力がいらない
速い思考は、考えようとしなくても勝手に答えを出します。集中や努力が必要なのは遅い思考(システム2)のほうです。

Q2. バットとボールの問題について、本文の内容と合うものはどれですか。

答えを見る

正解: 2. 有名大学の学生でも、半数ほどが直感の答えのまま誤答した
惜しいところですが、問題自体はやさしいのです。答えを確かめずに直感で出したため、プリンストン大学で50%、ミシガン大学で56%が誤答しました。

日常の場面で考える

Q3. 電話で「今日中に申し込めば半額です」と急かされました。この講座の考え方に沿った行動はどれですか。

答えを見る

正解: 3. いったん電話を切り、条件を書き出して確かめてから決める
急かされると、速い思考の答えがそのまま通りやすくなります。速い思考そのものは悪くないので、大事な場面で遅い思考に確かめさせるのがポイントです。

レッスン2-2はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第2章 限定合理性と二重過程 のレッスン一覧
  1. 2-1限定合理性
  2. 2-2二重過程理論
  3. 2-3直感が頼れる条件
  4. 2-4選択過多

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出典(3件)
  1. Daniel Kahneman (2002) "Maps of Bounded Rationality: A Perspective on Intuitive Judgment and Choice" Prize Lecture, December 8, 2002(NobelPrize.org)
  2. Shane Frederick (2005) "Cognitive Reflection and Decision Making" Journal of Economic Perspectives 19(4): 25-42
  3. Stanovich, K. E., & West, R. F. (2000) "Individual differences in reasoning: Implications for the rationality debate?" Behavioral and Brain Sciences 23: 645-665(DOI)