HOME / ゼロから学ぶ行動経済学 / 講座 / 第2章 限定合理性と二重過程 / 選択過多

第2章 限定合理性と二重過程 ・ レッスン2-4

選択肢が多すぎると選べない?選択過多の研究

約5分 ・ 公開日 2026-10-06

このレッスンの問い

ジャムが24種類並ぶ売り場と、6種類だけの売り場。買う人が多いのはどちらだと思いますか?先に予想してみてください。

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン2-3から

Q1. 専門家の直感が頼れるのは、どんな環境でしたか。

答えを見る

正解: 1. 規則性があり、十分な練習とすぐのフィードバックがある環境
ポイントは環境です。規則性があり、練習と答え合わせができる場では直感は育ちます。自信の強さは、正しさの証拠になりませんでしたね。

01ジャム売り場の実験

24種類より6種類の試食台のほうが、立ち寄った人がジャムを買う割合はずっと高くなりました。

2000年に発表された研究で、アイエンガーとレッパーはアメリカの高級スーパーで実験をしました。試食台に並べるジャムを、1時間ごとに24種類と6種類で入れ替えたのです。

24種類の台には通りかかった人の60%が立ち寄り、6種類では40%でした。たくさん並ぶほうが、まず人を引きつけたわけです。

ところが、立ち寄った人のうち実際に買ったのは、24種類で3%、6種類で約30%でした。選択肢が多すぎると選ぶ気が下がる。これを選択過多と呼びます。

02メタ分析では平均するとほぼゼロ

多くの実験をまとめて調べると、選択過多の効果は平均するとほぼゼロでした。

ジャムの実験は有名になり、多くの研究者が似た実験を重ねました。たくさんの研究の結果をまとめて、全体の傾向を数字で確かめる方法をメタ分析と呼びます。

2010年のシャイベヘンネらのメタ分析は、50の実験の63条件、5036人分を集めました。平均した効果はほぼゼロで、研究ごとのばらつきが大きいという結果です。

つまり、選択肢が多いと選べなくなる実験もあれば、まったく起きない実験もありました。ジャムの結果だけで「いつも起きる」と考えるのは、惜しいけれど言いすぎです。

03確かなのは「条件によっては起きる」

選択過多はいつも起きるのではなく、選ぶのが難しい条件がそろうと起きやすくなります。

2015年のチェルネフらのメタ分析は、99の結果、7202人分を調べ、起きやすくする4つの条件を示しました。選択肢が比べにくい、決める作業が難しい、好みがはっきりしない、手間を省きたい、の4つです。

たとえば職場の積立制度で、似た商品が何十本も並ぶ場面を考えてみましょう。比べにくく好みもはっきりしないので、4つの条件に当てはまり、決めるのを先送りしやすくなります。

ただし、どの場面でどれだけ起きるかを前もって正確に当てる方法は、まだはっきりしていません。迷ったときは、比べる軸を絞って比べやすくしてみるのも1つの手です。

試食台のジャム立ち寄った人の割合立ち寄った人のうち買った割合
24種類60%(242人中145人)3%(145人中4人)
6種類40%(260人中104人)約30%(104人中31人)
ジャム売り場の実験の結果(Iyengar & Lepper 2000 の本文の数値をもとに作成)

あなたの場合は?

最近、選択肢が多すぎて決めるのを先送りしたものはありますか?それは比べにくさや、好みがはっきりしないことが原因でしたか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. ジャム売り場の実験では、24種類より6種類の試食台のほうが、立ち寄った人の買う割合がずっと高かった(Iyengar & Lepper 2000)
  2. その後のメタ分析では、平均すると効果はほぼゼロで、研究ごとのばらつきが大きかった(Scheibehenne ほか 2010)
  3. 確かなのは「いつも起きる」ではなく、比べにくい・好みがはっきりしないなどの条件で起きやすいこと(Chernev ほか 2015)

TERMSこのレッスンの用語

選択過多Choice overload

選択肢が多すぎることで、選ぶ気や選んだものへの満足が下がるという現象。いつも起きるわけではなく、条件しだいで起きる。

メタ分析Meta-analysis

同じテーマの多くの研究結果をまとめて、全体としての効果の大きさを数字で確かめる方法。

LESSON 2-4 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. ジャム売り場の実験で、24種類の試食台に立ち寄った人のうち、実際に買った人の割合はどれでしたか。

答えを見る

正解: 3. 3%
24種類の台は立ち寄る人こそ60%と多かったのですが、買ったのは3%でした。約30%は6種類の台のほうです。

Q2. 2010年のメタ分析(シャイベヘンネら)の結果として正しいものはどれですか。

答えを見る

正解: 2. 平均すると効果はほぼゼロで、研究ごとのばらつきが大きかった
ここがポイントです。平均はほぼゼロでしたが、起きた実験も起きない実験もあり、ばらつきが大きかったのです。

日常の場面で考える

Q3. 地域の電力会社の料金プランが20種類あり、どれも仕組みが似ていて比べにくく、自分の好みもはっきりしません。選択過多について、最も適切な見方はどれですか。

答えを見る

正解: 1. 比べにくく好みもはっきりしないので、選択過多が起きやすい条件に当てはまる
選択過多は「いつも起きる」でも「決して起きない」でもありません。比べにくさや好みのあいまいさは、起きやすくする条件でしたね。

レッスン2-4はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第2章 限定合理性と二重過程 のレッスン一覧
  1. 2-1限定合理性
  2. 2-2二重過程理論
  3. 2-3直感が頼れる条件
  4. 2-4選択過多

講座の目次(全14章)へ

出典(3件)
  1. Iyengar, S. S., & Lepper, M. R. (2000). When choice is demotivating: Can one desire too much of a good thing? Journal of Personality and Social Psychology, 79(6), 995–1006.
  2. Scheibehenne, B., Greifeneder, R., & Todd, P. M. (2010). Can there ever be too many options? A meta-analytic review of choice overload. Journal of Consumer Research, 37(3), 409–425.(バーゼル大学リポジトリ)
  3. Chernev, A., Böckenholt, U., & Goodman, J. (2015). Choice overload: A conceptual review and meta-analysis. Journal of Consumer Psychology, 25(2), 333–358.(ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院の論文紹介)