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第2章 限定合理性と二重過程 ・ レッスン2-1

限定合理性とは?人は「最善」より「十分よい」を選ぶ

約4分 ・ 公開日 2026-10-06

このレッスンの問い

職場で備品の業者を選ぶとき、あなたなら全部の業者を比べ尽くしますか?それとも条件を満たす1社が見つかったら決めますか?読む前に予想してみましょう。

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

01人は「十分よい」で決める

人は最善の案を探し尽くさず、自分の合格ラインを超える案が見つかった時点で決めます。

職場で新しいコピー機の業者を選ぶ場面を考えてみましょう。「予算内」「修理に来てくれる」「来月までに届く」の3つを満たす業者が見つかれば、多くの人はそこで決めます。

このように、合格ラインを先に決めておき、それを超える案が出たら探すのをやめる。この選び方を満足化と呼びます。合格ラインのことは、願望水準といいます。

全部の業者を調べて一番よい1社を選ぶやり方は、最適化と呼ばれます。合理的経済人なら最適化をしますが、現実の私たちはたいてい満足化で決めています。

02サイモンが唱え、ノーベル賞へ

この考え方を唱えたのはハーバート・サイモンで、1978年にノーベル経済学賞を受けました。

サイモンは1955年の論文で、経済人の完全な合理性を、実際に手に入る情報と計算する力に見合った合理性に置き換えよう、と書きました。人の合理性には限りがあるという考え方を、限定合理性と呼びます。

受賞の理由は、企業などの組織の中で、物事がどう決められるかを研究したことです。従来の理論は、何でも知っていて利益を最大にする経営者を想定していました。

サイモンはこれを否定しました。決める人は、結果を全部は見通せず、人間関係にも縛られます。だから最善の案は選べず、満足できる案で納得するしかない、と考えたのです。

03限りがあるのは愚かさではない

限定合理性は頭が悪いという意味ではなく、限りある頭と時間で生きるための現実的なやり方です。

ここがポイントです。調べる時間も、覚えておける量も、誰にでも限りがあります。限りがある中で合格ラインを決めて選ぶのは、手を抜いているのではなく、理にかなった工夫です。

ノーベル賞の発表文も、サイモンの理論は優美さでは劣るが、現実の理解と予測に役立つと評価しています。企業や行政の計画・予算の仕組みにもよく当てはまり、現代の経営学や行政の研究の多くがその考えを土台にしています。

ただし、合格ラインが低すぎれば損な選択になります。どんな場面でどの程度の合格ラインがよいのかは、場面ごとに考える必要があります。

最適化(合理的経済人)満足化(現実の人)
目標一番よい1社を選ぶ合格ラインを超える1社を選ぶ
調べる範囲すべての業者条件を満たす業者が見つかるまで
やめるとき全部を比べ終えたとき合格ラインを超えたとき
必要なもの完全な情報と、無限の時間・計算力合格ラインと、手元の情報
最適化と満足化のちがい(職場でコピー機の業者を選ぶ場合)

あなたの場合は?

最近の買い物や仕事の選択で、「これで十分」と決めた合格ラインは何でしたか?それは低すぎず、高すぎませんでしたか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 情報・時間・考える力に限りがあるので、人は最善ではなく「十分よい」案で選ぶ(満足化)
  2. 限定合理性はサイモンが唱え、1978年にノーベル経済学賞を受けた
  3. 限定合理性は愚かさではなく、限りある頭で生きるための現実的なやり方

TERMSこのレッスンの用語

限定合理性Bounded rationality

情報・時間・考える力に限りがあるため、人の合理性にも限りがあるという考え方。

満足化Satisficing

合格ラインを決めておき、それを超える案が見つかった時点で選ぶやり方。

願望水準Aspiration level

満足化で使う合格ライン。「これを超えればよい」とする基準。

LESSON 2-1 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. 「満足化」の説明として正しいものはどれですか。

答えを見る

正解: 2. 合格ラインを超える案が見つかった時点で選ぶこと
満足化は、合格ライン(願望水準)を超えたら探すのをやめる選び方です。すべてを比べて一番を選ぶのは最適化でした。

Q2. サイモンが1978年にノーベル経済学賞を受けた理由はどれですか。

答えを見る

正解: 1. 組織の中で物事がどう決められるかを研究したこと
惜しい選択肢もありますが、受賞理由は経済組織の中の意思決定の研究です。損を強く感じる話は第4章で学びます。

日常の場面で考える

Q3. 地域の防災倉庫に置く水を買う係になりました。「必要な本数がそろう」「予算内」「来週までに届く」を満たす業者を見つけ、そこに決めました。この選び方はどれに近いですか。

答えを見る

正解: 2. 満足化
ここがポイントです。条件(合格ライン)を先に決め、満たす業者が見つかった時点で決めたので満足化です。手抜きではなく、限られた時間での理にかなった選び方です。

レッスン2-1はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第2章 限定合理性と二重過程 のレッスン一覧
  1. 2-1限定合理性
  2. 2-2二重過程理論
  3. 2-3直感が頼れる条件
  4. 2-4選択過多

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出典(4件)
  1. NobelPrize.org「The Prize in Economic Sciences 1978 - Press release」(1978年10月16日)
  2. NobelPrize.org「Herbert A. Simon - Facts」
  3. Stanford Encyclopedia of Philosophy「Bounded Rationality」
  4. Simon, H. A. (1955). A Behavioral Model of Rational Choice. The Quarterly Journal of Economics, 69(1), 99-118.