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第1章 行動経済学とは ・ レッスン1-2

合理的経済人とは?経済学が置いた3つの前提

約5分 ・ 公開日 2026-10-04

このレッスンの問い

あなたは買い物のたびに、すべての店の値段を比べてから買っていますか?

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン1-1から

Q1. 行動経済学が特に注目する「ずれ」はどれでしたか。

答えを見る

正解: 1. 多くの人に同じ向きで起き、予測できるずれ
ずれ方が決まっているので、理論に組み込んで予測に使えます。これを系統的なずれと呼びました。

01経済学が置いてきた「合理的な人」

合理的経済人とは、情報を完全に使いこなし、計画どおりに動き、自分の得だけを考える人を想定した、経済学の前提です。

伝統的な経済学は、自分の利益のために合理的に判断できる人を前提にしてきました。この想定上の人物を、合理的経済人(ホモ・エコノミカス)と呼びます。

前提を詳しく見ると、3つに分けられます。情報をよく集めて完全に処理できること、立てた計画をいつも実行できること、自分の得だけを気にすることです。

合理的経済人は、牛乳1本を買うときも近所の全店の値段と品質を調べ、最も得な1本を選びます。買いすぎも衝動買いもしません。もちろん、こんな人は現実にはほとんどいませんね。

02単純な前提には理由がある

人は複雑なので、役に立つ理論を作るには単純にする必要がありました。この前提は、多くの経済問題を解くのに役立ってきました。

物理の授業で「空気の抵抗はないものとする」と習ったことがあるでしょう。経済学の前提も同じで、現実をわざと単純にして、大事な仕組みを取り出すための道具です。

この前提のおかげで、経済学者は大事で複雑な問題に答えを出してきました。

ただし、理論と現実のずれが、決まった向きに大きく出ることがあります。そこで前提のほうを見直そうというのが、行動経済学の出発点です。

03現実の人とのずれは3つ

セイラーは、前提とのずれを「考えきれない」「公平さを気にする」「誘惑に負ける」の3つで整理しました。

1つめは、すべてを考えきれないことです。買い物のたびに全部の店を比べる人はいません。このように合理性に限りがあることを、限定合理性と呼びます。

2つめは、自分の得だけでなく、公平さや他人のことも気にすることです。3つめは、計画を立てても目先の誘惑に負けることです。新年の目標が続かないのは、この3つめの例です。

この3つは、この講座全体の地図になります。下の表で、どの章で詳しく学ぶかを確かめておきましょう。

合理的経済人の前提現実の人詳しく学ぶ章
情報を完全に処理できる全部は考えきれず、簡単な方法で決める第2〜6章
計画をいつも実行できる目先の誘惑に負けることがある第7章
自分の得だけを考える公平さや他人のことも気にする第8章
合理的経済人の3つの前提と、現実の人とのずれ(2017年ノーベル経済学賞の公式解説をもとに作成)

あなたの場合は?

最近の買い物で、比べるのを途中でやめて「これでいいか」と決めたものはありますか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 合理的経済人とは、情報を完全に処理し、計画どおりに動き、自分の得だけを考える人という経済学の前提
  2. 単純な前提は理論づくりに役立ってきたが、現実と決まった向きに大きくずれることがある
  3. ずれは3つ。考えきれない(限定合理性)、公平さを気にする、目先の誘惑に負ける

TERMSこのレッスンの用語

合理的経済人(ホモ・エコノミカス)Homo economicus

情報を完全に処理し、計画どおりに動き、自分の得だけを考える人という、経済学が置いてきた前提上の人物。

限定合理性Bounded rationality

人の知識や考える力には限りがあり、すべての選択肢を比べて最善を選ぶことはできないという考え方。

LESSON 1-2 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. 合理的経済人の前提に含まれないものはどれですか。

答えを見る

正解: 3. 他人との公平さを、自分の得より大切にする
合理的経済人は、自分の得だけを考える人として想定されています。公平さを気にするのは、前提とずれる現実の人の特徴です。

Q2. 経済学が「合理的経済人」という単純な前提を置いた理由として、最も適切なものはどれですか。

答えを見る

正解: 2. 人は複雑なので、役に立つ理論を作るには単純にする必要があったから
ポイントは単純化です。物理で空気の抵抗を無視するのと同じで、理論は現実を単純にすることで役に立ちます。

日常の場面で考える

Q3. 「毎月3万円貯金する」と年初に決めたのに、3月にはつい使ってしまいました。3つのずれのうち、どれに当たりますか。

答えを見る

正解: 2. 計画を立てても目先の誘惑に負ける
計画を実行しきれず、目先の楽しみを選んでしまうのは3つめのずれです。第7章で、その仕組みと対策を学びます。

レッスン1-2はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第1章 行動経済学とは のレッスン一覧
  1. 1-1行動経済学とは
  2. 1-2合理的経済人
  3. 1-3行動経済学の使い道

講座の目次(全14章)へ

出典(3件)
  1. NobelPrize.org「The Prize in Economic Sciences 2002 - Press release」
  2. NobelPrize.org「Popular information: Easy money or a golden pension? Integrating economics and psychology」(2017年 経済学賞の解説)
  3. NobelPrize.org「The Prize in Economic Sciences 2017 - Press release」