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第1章 行動経済学とは ・ レッスン1-1

行動経済学とは?心理学で人の選び方を見直す学問

約4分 ・ 公開日 2026-10-04

このレッスンの問い

新年に立てた目標が、年末まで続いたことはありますか?続かないのは、あなたの意志が弱いせいだけでしょうか。

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

01行動経済学は「実際の人」の選び方を調べる

行動経済学とは、心理学の知見を取り入れて、人が実際にどう判断し、どう選ぶのかを調べる経済学の分野です。

経済学は、人やお店がお金や物をどう選び、市場で何が起きるかを考える学問です。考えを整理するために、昔から「人は合理的に判断する」という単純な前提を置いてきました。

ところが、現実の人はいつも計算どおりには動きません。新年の目標が続かない、セールだとつい買ってしまう。こうしたずれを心理学の力で説明しようとするのが、行動経済学です。

かつて経済学は、実験のできない学問だと考えられていました。天文学のように、現実の経済を観察するしかなかったのです。今では、実験で人の選び方を確かめる研究が、経済学の大事な道具になっています。

02ずれは「たまたま」ではなく「同じ向き」に起きる

行動経済学が注目するのは、多くの人に同じ向きで繰り返し起きる、予測できるずれです。

一人ひとりがときどき間違えるだけなら、研究しても法則は見つかりません。ところが研究では、多くの人が同じ方向にずれることがわかってきました。このようなずれを「系統的なずれ」と呼びます。

2002年にノーベル経済学賞を受けた心理学者カーネマンは、人の判断が標準的な経済理論の予測から系統的に外れることを示しました。ずれ方が決まっているなら、理論に組み込んで予測に使えます。

大事なのは「人は愚かだ」と言うことではありません。どんな場面で、どちらの向きにずれるのかを確かめることです。

032つのノーベル賞が分野を広げた

行動経済学は、2002年のカーネマンと2017年のセイラーのノーベル経済学賞によって、経済学の重要な分野として認められました。

カーネマンは、共同研究者のトベルスキーとともに、損と得の感じ方を説明するプロスペクト理論を作りました。この理論は第4章で学びます。

2017年に受賞したセイラーは、心理学の知見を経済の分析に組み込み、経済学と心理学の間に橋をかけたと評価されました。「ナッジ」という言葉を作ったのもセイラーです。

行動経済学は、伝統的な経済学を捨てる学問ではありません。単純な前提を、より現実に近い前提で補う試みです。

比べる点伝統的な経済学行動経済学
人をどう見るか自分の得のために合理的に判断する人判断のくせを持つ、現実の人
主な調べ方現実の経済の観察と理論観察と理論に、実験で人の選び方を確かめる方法を加える
得意なこと市場全体の動きを単純な形で説明する目標が続かないなど、理論とずれる行動を説明する
伝統的な経済学と行動経済学の見方の違い(ノーベル賞の公式解説をもとに作成)

あなたの場合は?

最近、「わかっているのに、ついやってしまった」お金や時間の使い方はありますか?それは、ほかの人にも起きそうなことでしょうか。

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 行動経済学は、心理学の知見を取り入れて、人が実際にどう判断し選ぶかを調べる経済学の分野
  2. 注目するのは、多くの人に同じ向きで起きる「予測できるずれ」(系統的なずれ)
  3. 2002年のカーネマン、2017年のセイラーのノーベル経済学賞で、重要な分野として認められた

TERMSこのレッスンの用語

行動経済学Behavioral economics

心理学の知見を取り入れて、人が実際にどう判断し選ぶのかを調べる経済学の分野。

系統的なずれSystematic deviation

たまたまではなく、多くの人に同じ向きで繰り返し起きる、理論の予測からのずれ。

LESSON 1-1 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. 行動経済学の説明として、最も適切なものはどれですか。

答えを見る

正解: 1. 心理学の知見を取り入れて、人が実際にどう判断し選ぶかを調べる経済学の分野
行動経済学は、経済学に心理学の知見を取り入れる分野です。伝統的な経済学を捨てるのではなく、前提をより現実に近づけて補います。

Q2. 行動経済学が特に注目する「ずれ」はどれですか。

答えを見る

正解: 2. 多くの人に同じ向きで起き、予測できるずれ
ここがポイントです。ずれ方に決まった向きがあるからこそ、理論に組み込んで予測に使えます。これを系統的なずれと呼びます。

日常の場面で考える

Q3. 友人が「毎年元日にジム通いを決めるけれど、2月には行かなくなる」と話しています。行動経済学の見方に最も近いのはどれですか。

答えを見る

正解: 2. 多くの人に同じように起きることなので、仕組みを調べれば対策を考えられる
新年の目標が続かないのは、多くの人に起きるずれです。行動経済学は、こうしたずれを個人の弱さで片づけず、仕組みとして調べます。

レッスン1-1はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第1章 行動経済学とは のレッスン一覧
  1. 1-1行動経済学とは
  2. 1-2合理的経済人
  3. 1-3行動経済学の使い道

講座の目次(全14章)へ

出典(3件)
  1. NobelPrize.org「The Prize in Economic Sciences 2002 - Press release」
  2. NobelPrize.org「The Prize in Economic Sciences 2017 - Press release」
  3. NobelPrize.org「Popular information: Easy money or a golden pension? Integrating economics and psychology」(2017年 経済学賞の解説)