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第11章 行動ファイナンス ・ レッスン11-2

気質効果とは?利益はすぐ確定し、損は持ち続ける

約5分 ・ 公開日 2026-10-06 ・ 更新日 2026-10-07

このレッスンの問い

持っている株のうち、1つは値上がり、1つは値下がりしています。急にお金が必要になったら、どちらを売りたくなりますか?先に予想してから読み進めましょう。

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン11-1から

Q1. 2013年のノーベル経済学賞で、同じ年に受賞したのはどの組み合わせでしたか。

答えを見る

正解: 1. 効率的市場を研究したファーマと、行動ファイナンスを研究したシラー
考え方が対立する2人が同時に受賞しました。価格は情報を反映するという見方と、投資家の判断のくせが価格に表れるという見方の両方が評価されたのです。

01上がった株は売り、下がった株は持ち続ける

値上がりした株は早く売り、値下がりした株は長く持ち続けやすい。この傾向を気質効果と呼びます。

株が値上がりすると、今のうちに利益を確定しようと売りたくなります。反対に値下がりすると、戻るまで待とうと持ち続けがちです。この傾向を気質効果と呼びます。

名づけたのは、1985年のシェフリンとスタットマンの論文です。題名は「勝った株を早く売りすぎ、負けた株を長く持ちすぎる性質」という意味でした。

例えば、老後に備えて2つの株を持つ人が、急な出費でどちらかを売るとします。どちらの株にも新しい情報がなければ、値上がりしている方を売りやすいのです。

02約1万口座の売買記録で確かめられた

1987〜1993年の約1万口座を調べた研究で、値上がり中の株は値下がり中の株より5割ほど売られやすいことがわかりました。

オーディーンは1998年、アメリカの大手の割引証券会社で、1万口座の取引記録を調べました。期間は1987年から1993年までです。

株を売った日ごとに、値上がり中の株のうち実際に売られた割合を数えます。これを利益の確定率と呼び、値下がり中の株についても同じく損失の確定率を求めます。

結果は、利益の確定率が14.8%、損失の確定率が9.8%でした。ただし12月に限ると逆転しました。論文は、税金を減らすために損を確定する売却が12月に目立つと分析しています。

03買った値段が「ものさし」になる

気質効果は、買った値段を参照点にし、得の場面では確実さを、損の場面では賭けを好む心の動きで説明されます。

第5章で学んだ参照点を思い出しましょう。投資では、買った値段が損か得かを決めるものさしになりやすいのです。

買値より上なら得の場面、下なら損の場面です。第4章の反射効果のとおり、得の場面では利益を確実に手にしたくなり、損の場面では売らずに値が戻るほうに賭けたくなります。

一方で「下がった株はいずれ戻る」と信じているだけ、という説明もあり、どちらが主な理由かはまだはっきりしていません。なお同じ研究では、売った値上がり株のほうが、持ち続けた値下がり株より、その後1年の成績が市場平均と比べて3.4ポイント高くなりました。

これは過去の平均の話です。どの株を売るべきかを示すものではありません。

期間利益の確定率損失の確定率売られやすいのは
1年全体14.8%9.8%値上がり中の株
1〜11月15.2%9.4%値上がり中の株
12月10.8%12.8%値下がり中の株
値上がり中・値下がり中の株のうち、売られた割合(Odean 1998 の表Iより作成。1987〜1993年、アメリカの割引証券会社の約1万口座)

あなたの場合は?

値下がりした物や、高く買った物を「元が取れるまで」と手放せずにいるものはありますか?そのとき、ものさしになっているのは何の値段でしょうか。

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 気質効果とは、値上がりした株は早く売り、値下がりした株は持ち続けやすい傾向(Shefrin & Statman 1985)
  2. 約1万口座の売買記録(1987〜1993年)で、利益の確定率14.8%に対し損失の確定率は9.8%だった(Odean 1998)
  3. 買った値段が参照点になり、得の場面では確定を急ぎ、損の場面では戻るほうに賭けて持ち続けやすい(反射効果)

TERMSこのレッスンの用語

気質効果Disposition effect

値上がりした投資は早く売り、値下がりした投資は長く持ち続けやすい傾向。

含み益・含み損Paper gain / Paper loss

持っている株などが、買った値段より上がって(下がって)いるが、まだ売っていないため確定していない利益(損失)。

利益の確定率・損失の確定率PGR / PLR (Proportion of Gains / Losses Realized)

値上がり中(値下がり中)の株のうち、実際に売られた株の割合。気質効果を測るためにオーディーンが使った指標。

LESSON 11-2 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. オーディーン(1998年)が約1万口座の売買記録を調べた結果として、正しいものはどれですか。

答えを見る

正解: 2. 1年全体では、利益の確定率のほうが損失の確定率より高かった
1年全体では利益の確定率14.8%、損失の確定率9.8%でした。12月に限ると、損失の確定率が上回りました。ここがポイントです。

Q2. 気質効果を説明するとき、投資家の参照点(損か得かを決めるものさし)とされることが多いのはどれですか。

答えを見る

正解: 3. 自分が株を買った値段
買った値段より上なら得、下なら損と感じます。損の場面では、売らずに値が戻るほうに賭けたくなるのです。

日常の場面で考える

Q3. Bさんは、値上がりした株は少し上がるとすぐ売り、値下がりした株は「買値に戻るまで」と何年も持ち続けています。この行動に最も近いものはどれですか。

答えを見る

正解: 1. 気質効果
利益はすぐ確定し、損は持ち続ける。まさに気質効果の典型です。時間割引は、先の利益を小さく感じる傾向なので、ここでは当てはまりません。

レッスン11-2はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第11章 行動ファイナンス のレッスン一覧
  1. 11-1行動ファイナンス
  2. 11-2気質効果
  3. 11-3自信過剰と売買
  4. 11-4近視眼的損失回避

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出典(3件)
  1. Shefrin, H., & Statman, M. (1985). The Disposition to Sell Winners Too Early and Ride Losers Too Long: Theory and Evidence. Journal of Finance, 40(3), 777-790.
  2. Odean, T. (1998). Are Investors Reluctant to Realize Their Losses? Journal of Finance, 53(5), 1775-1798(著者公開版)
  3. NobelPrize.org「The Prize in Economic Sciences 2013 - Press release」(復習問題)