HOME / ゼロから学ぶ行動経済学 / 講座 / 第11章 行動ファイナンス / 自信過剰と売買
第11章 行動ファイナンス ・ レッスン11-3自信過剰と売り買いのしすぎ。回数が多い人ほど成績が低かった
約5分 ・ 公開日 2026-10-06 ・ 更新日 2026-10-07
このレッスンの問い
株をこまめに売り買いする人と、ほとんど売り買いしない人。成績がよいのはどちらだと思いますか?読む前に予想してみましょう。
読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。
前のレッスンの復習(1問)
本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。
Q1. 前のレッスンで学んだ、投資の「気質効果」とはどんな傾向でしたか。
答えを見る
正解: 1. 値上がりした株は早く売り、値下がりした株は持ち続けやすい
買った値段を参照点にすると、得の場面では確定を急ぎ、損の場面では持ち続けやすくなるためでした。第4章の反射効果と第5章の参照点で説明できます。
01自信過剰は売り買いを増やす
自分の読みを実際より正しいと思うと、「今が売り時・買い時だ」と感じる回数が増え、売り買いが多くなります。
第2章で、自分の判断の正しさを実際より高く感じる「自信過剰」を学びました。投資では、この心のくせが売り買いの回数に表れると考えられています。
通勤電車で株価を何度も見て、「上がりそう」とすぐ買い、「下がりそう」とすぐ売る。読みが当たると信じるほど、動きたくなります。必要以上に売り買いすることを、過剰な売買と呼びます。
売り買いには、そのたびに手数料などの費用がかかります。この費用を取引コストと呼びます。読みが当たらなければ、費用の分だけ手元のお金が減ります。
02売り買いが多い人ほど、手元に残る利益が少なかった
米国の個人投資家の記録では、売り買いが最も多いグループの年利回りは11.4%で、最も少ないグループの18.5%を大きく下回りました。
バーバーとオディーンは、米国の証券会社に口座を持つ約6万6千世帯の、1991〜1996年の記録を調べました(2000年発表)。世帯を売買の多さで5つのグループに分けて比べています。
費用を引く前の成績は、どのグループもほぼ同じでした。ところが費用を引くと、売買が最も多い2割は年11.4%、最も少ない2割は年18.5%でした。同じ時期の市場全体は年17.9%です。
たくさん売り買いしても株選びの成績は上がらず、費用だけが積み重なっていたのです。論文は、この結果は自信過剰で説明できると述べています。
03男性は女性より売り買いが多く、成績を下げていた
同じ2人の研究で、男性は女性より45%多く売り買いし、売買による年利回りの目減りも大きいことが分かりました。
心理学の研究では、お金の分野では男性のほうが自信過剰になりやすいとされます。そこで2人は、3万5千を超える世帯の口座を、開いた人の性別で分けました(2001年発表)。
持っている株を1年でどれだけ入れ替えたかを、売買回転率と呼びます。女性は約53%、男性は約77%でした。売買による年利回りの目減りは、女性が1.72ポイント、男性が2.65ポイントです。
ただし、自信の強さを直接測ったのではなく、性別を目安にした研究です。また平均の差なので、一人ひとりに当てはまるわけではありません。
データは1990年代の米国のものです。売買の費用や環境が変わった今も同じ大きさの差が出るかは、まだはっきりしていません。
| 項目 | 売買が最も少ない2割 | 売買が最も多い2割 |
|---|---|---|
| 1か月に入れ替えた株の割合(平均) | 0.19% | 21.49% |
| 費用を引く前の年利回り | 18.7% | 18.5〜18.7%の間(ほぼ同じ) |
| 費用を引いた後の年利回り | 18.5% | 11.4% |
あなたの場合は?
最近、「自分の判断は正しい」と自信を持ってすぐ決めたことで、あとから見ると手間や費用がかさんでいたものはありますか?
答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。
覚えるのはこの3つ
- 自信過剰とは、自分の判断を実際より正しいと思いやすいこと。投資では売り買いの回数を増やす
- 売買が最も多い2割の世帯は、費用を引いた年利回りが11.4%で、最も少ない2割の18.5%を下回った(Barber & Odean 2000)
- 男性は女性より45%多く売り買いし、売買による目減りも大きかった(Barber & Odean 2001)
TERMSこのレッスンの用語
売り買いのたびにかかる手数料などの費用。売買の回数が多いほど積み重なる。
持っている株を一定の期間にどれだけ入れ替えたかを表す割合。高いほど売り買いが多い。
必要以上に売り買いすること。自信過剰が原因の一つと考えられている。
LESSON 11-3 の確認
確認問題(全3問)
本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。
Q1. Barber & Odean(2000)で、売り買いが最も多いグループの成績が悪かった主な理由はどれですか。
答えを見る
正解: 2. 費用を引く前の成績はほぼ同じで、売買の費用が積み重なったから
ここがポイントです。費用を引く前の成績はどのグループもほぼ同じでした。差を生んだのは、売り買いのたびにかかる費用です。同じ時期の市場全体は年17.9%で、値下がりしていません。
Q2. Barber & Odean(2001)が、口座を男性と女性に分けて比べた理由として正しいものはどれですか。
答えを見る
正解: 1. お金の分野では男性のほうが自信過剰になりやすいという心理学の知見があったから
自信の強さは直接測れないため、自信過剰になりやすいとされる性別を目安にしました。結果は予測どおり、男性のほうが売り買いが多いというものでした。
Q3. 友人が「最近は毎日のように株を売り買いしている。自分の読みはよく当たるから」と話しています。このレッスンの内容から言えることはどれですか。
答えを見る
正解: 2. 売り買いのたびに費用がかかり、読みへの自信が実際の正しさを上回っている可能性がある
惜しい選択肢もありますが、自信の強さは正しさの証拠になりません。研究では、売り買いが多いほど費用がかさみ、手元に残る利益が少なくなっていました。
出典(2件)
- Barber, B. M. & Odean, T. (2000). Trading Is Hazardous to Your Wealth: The Common Stock Investment Performance of Individual Investors. Journal of Finance, 55(2), 773-806.(著者公開版)
- Barber, B. M. & Odean, T. (2001). Boys Will Be Boys: Gender, Overconfidence, and Common Stock Investment. Quarterly Journal of Economics, 116(1), 261-292.(著者公開版)