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第11章 行動ファイナンス ・ レッスン11-4近視眼的損失回避とは?確かめる回数でリスクの感じ方が変わる
約5分 ・ 公開日 2026-10-06
このレッスンの問い
毎日結果を確かめる人と、年に1回だけ確かめる人。リスクのある選択をしやすいのはどちらだと思いますか?少し予想してから読み進めましょう。
読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。
前のレッスンの復習(1問)
本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。
Q1. 個人投資家の売買記録から分かった、売り買いの回数と成績の関係はどれでしたか。
答えを見る
正解: 1. 売り買いの回数が多い人ほど、成績が悪かった
ここがポイントです。自分の判断を実際より正しいと思う自信過剰が、売り買いのしすぎにつながり、成績を下げていました。
01確かめる回数がリスクの感じ方を変える
結果をこまめに確かめるほど損を目にする回数が増え、リスクのある選択を避けやすくなります。
上がったり下がったりするものは、短い期間で見るほど「下がった」場面が目に入ります。第4章で学んだように、人は同じ額でも得より損を強く感じます。そのため、こまめに確かめるほど嫌な気持ちが積み重なります。
損を強く感じることに、結果を確かめる間隔の短さが重なる。この組み合わせを、ベナルツィとセイラーは近視眼的損失回避と名づけました。近視眼的とは、目先の短い期間だけを見るという意味です。
職場で省エネの取り組みを始めたとします。電気代を毎日見ると、天気などで高い日が目に入り、「効果がない」とやめたくなります。月ごとにまとめて見れば、日々の上下にふり回されにくくなります。
02知らせる回数を減らすと、賭ける額が増えた
1997年の実験では、結果をまとめて知らせたグループのほうが、毎回知らせたグループより多くの割合を賭けました。
ニーズィーとポッターズは、オランダのティルブルフ大学の学生84人で実験しました。参加者は毎回200セントを受け取り、そのうちいくらを賭けるかを決めます。賭けは3分の2の確率で賭けた額を失い、3分の1の確率で賭けた額の2.5倍を得るものでした。
一方のグループは、1回ごとに賭けて結果を見ました。もう一方は3回分の賭け金を同じ額でまとめて決め、3回の結果を同時に知らされました。結果を知らせる回数を変えて、損を目にする回数を変えたのです。
最初の9回で賭けた割合の平均は、毎回知らせたグループが50.5%、まとめて知らせたグループが67.4%でした。ただし学生が少ない金額で行った実験なので、大きなお金の判断にどこまで当てはまるかは慎重に見る必要があります。
03株式の利回りが高すぎる謎の説明の一つ
近視眼的損失回避は、株式の利回りが国債などよりずっと高い「株式プレミアムの謎」を説明する考え方の一つです。
ベナルツィとセイラーによると、1926年以降のアメリカでは、株式の実質的な利回りが年約7%、短期国債は1%未満でした。普通のリスクの嫌い方では、この差の大きさを説明しきれません。これを株式プレミアムの謎と呼びます。
二人は、人々が約1年ごとに損得を見直すと考えると、この差の大きさと合うことを計算で示しました。老後の資金のように長い目的があっても、短い間隔で見直すと株式は避けられやすい、という説明です。
ただし謎の説明はほかにも出されていて、どれが正しいかはまだはっきりしていません。二人自身も、一つの説明が正しいと示す方法はないと書いています。この講座は投資をすすめるものではなく、判断のくせを知るためのものです。
| グループ | 賭け方と結果の知らせ方 | 賭けた割合の平均 |
|---|---|---|
| 毎回知らせる | 1回ごとに賭けて、毎回結果を見る | 50.5% |
| まとめて知らせる | 3回分を同じ額で賭けて、3回の結果を同時に見る | 67.4% |
あなたの場合は?
あなたが毎日のように確かめている数字(体重、売上、家計の残高など)で、日々の上下に気持ちがふり回されているものはありますか?
答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。
覚えるのはこの3つ
- 結果をこまめに確かめるほど損を目にする回数が増え、リスクを避けやすくなる(近視眼的損失回避)
- 結果をまとめて知らせた実験では、賭けた割合が毎回知らせたときより高かった(50.5%と67.4%)
- 株式の利回りが高すぎる謎(株式プレミアムの謎)の説明の一つだが、どれが正しいかはまだはっきりしていない
TERMSこのレッスンの用語
損を強く感じる傾向に、結果を短い間隔で確かめることが重なり、リスクのある選択を避けやすくなること。
結果の損得をまとめて見直す間隔。短いほど損を目にする回数が増える。
株式の利回りが国債などより大きく上回ってきた差が、普通のリスクの嫌い方では説明しきれないという謎。
LESSON 11-4 の確認
確認問題(全3問)
本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。
Q1. 近視眼的損失回避を生む2つの要素の組み合わせはどれですか。
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正解: 1. 損を強く感じることと、結果を確かめる間隔が短いこと
損を強く感じる傾向に、こまめに確かめる習慣が重なると、損を目にする回数が増えてリスクを避けやすくなります。
Q2. ニーズィーとポッターズの実験で、賭けた割合の平均が高かったのはどちらですか。
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正解: 2. 3回分の結果をまとめて知らされたグループ
惜しい、逆に考えた人も多いところです。まとめて知らされたグループは67.4%、毎回知らされたグループは50.5%でした。
Q3. 地域で始めた、ごみを減らす取り組みの効果を確かめたいとします。日々の上下にふり回されにくい見方はどれですか。
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正解: 2. 月ごとにまとめて量を見て、続けるかどうかを決める
ここがポイントです。見直す間隔を長くしてまとめて見ると、たまたま増えた日に気持ちが引っぱられにくくなります。
出典(3件)
- Benartzi, S., & Thaler, R. H. (1995). Myopic Loss Aversion and the Equity Premium Puzzle. Quarterly Journal of Economics, 110(1), 73-92.(書誌情報)
- Benartzi, S., & Thaler, R. H. (1993). Myopic Loss Aversion and the Equity Premium Puzzle. NBER Working Paper No. 4369(上の論文の草稿版)
- Gneezy, U., & Potters, J. (1997). An Experiment on Risk Taking and Evaluation Periods. Quarterly Journal of Economics, 112(2), 631-645.