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第11章 行動ファイナンス ・ レッスン11-1

行動ファイナンスとは。市場にも心のくせが現れる

約5分 ・ 公開日 2026-10-06 ・ 更新日 2026-10-07

このレッスンの問い

株価が大きく上がったり下がったりするのは、新しい情報のせいでしょうか。それとも人の気持ちのせいでしょうか。読む前に予想してみてください。

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

01伝統的な考え方: 価格は情報をすぐ映す

効率的市場仮説では、株価は新しい情報をすぐに取り込むので、数日や数週間先の値動きは予測できないと考えます。

株の値段は、会社のよい知らせや悪い知らせが出るとすぐに動きます。手に入る情報がすばやく価格に取り込まれるという考え方を、効率的市場仮説と呼びます。

ファーマたちは1960年代から、株価は短い期間ではきわめて予測しにくく、新しい情報がとても速く価格に入ることを示しました。たとえば、配当(会社が利益の一部を株主に配るお金)を増やすと発表されると、株価は一気に上がります。けれどもその後は、上にも下にも決まった流れがありません。

誰でも知っている情報で確実にもうけられるなら、みんなが同じことをして、そのもうけはすぐ消えます。だから、すでに出た情報だけでは短期の値動きを当てられない、というわけです。

02行動ファイナンス: 価格に心のくせが表れる

行動ファイナンスは、投資家の判断のくせが価格や売買に表れると考え、価格が本来の価値から離れる理由を説明しようとします。

シラーは1981年の論文で、株価は配当の変化で説明できる以上に大きく揺れていることを示しました。アメリカの株価指数の1871〜1979年のデータで、実際の株価と、その後に払われた配当から計算した値段を比べたのです。

配当から計算した値段はなめらかに動くのに、実際の株価は大きく上下していました。理論から考えられるより価格の揺れが大きすぎる。この現象を過剰変動と呼びます。

行動ファイナンスでは、楽観しすぎて将来のもうけを高く見積もるといった心のくせが、価格を押し上げると考えます。賢い投資家も、お金を借りられる額に限りがあるなどの制約で、行き過ぎを正しきれないことがあります。

たとえば、ある街で「まだ上がる」という期待だけでマンションを買う人が増えた場面を想像してください。住みやすさは変わらないのに値段だけが上がれば、地元で家を探す人には手が届きにくくなります。

032013年、ノーベル賞は両方の立場に

2013年のノーベル経済学賞は、効率的市場のファーマと行動ファイナンスのシラーに、ハンセンを加えた3人が同時に受賞しました。

受賞理由は「資産価格の実証分析」です。株や債券の値段は、数日や数週間先は予測できません。けれども3〜5年といった長い期間の大まかな流れは見通せるという、一見矛盾する発見でした。

長い期間で予測できる理由には、2通りの説明があります。リスクが特に高い時期に、合理的な投資家が求める見返りだとする説明と、行動ファイナンスの説明です。ハンセンは、合理的な理論を確かめる統計の方法を作りました。

どちらがどれだけ正しいかは、まだはっきりしていません。ノーベル賞の解説も、リスクの変化と価格の間違いのどちらによるのかを言うには早すぎる、としています。なお、このレッスンは仕組みを知るためのもので、特定の売買をすすめるものではありません。

合理的な考え方(効率的市場)行動ファイナンス
価格が映すもの手に入る情報をすばやく取り込む情報に加え、楽観しすぎなど心のくせも映す
数年単位で予測できる動きリスクの高い時期を耐えることへの見返りと考える見通しの行き過ぎが、やがて戻ると考える
行き過ぎが残る理由行き過ぎとは見なさない賢い投資家も借りられる額などの制約で正しきれない
2013年の受賞者ファーマ(ハンセンは合理的な理論を確かめる方法を開発)シラー
合理的な考え方と行動ファイナンスの比べ方(2013年ノーベル経済学賞の公式解説をもとに作成)

あなたの場合は?

ニュースで「株価が急上昇」と聞いたとき、あなたは新しい情報の反映だと思いますか。それとも人々の期待の行き過ぎだと思いますか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 効率的市場仮説では、価格は情報をすばやく取り込むので、短期の値動きは予測できない
  2. 行動ファイナンスは、投資家の心のくせが価格や売買に表れると考える。シラーは株価が配当で説明できる以上に揺れることを示した
  3. 2013年のノーベル経済学賞は、ファーマ(効率的市場)とシラー(行動ファイナンス)がハンセンとともに同時に受賞した

TERMSこのレッスンの用語

効率的市場仮説Efficient market hypothesis

手に入る情報がすばやく価格に取り込まれるため、すでに出た情報だけでは短期の値動きを予測できないという考え方。

配当Dividend

会社が利益の一部を株主に配るお金。株の本来の価値は、将来の配当をもとに考えられる。

過剰変動Excess volatility

株価が、配当の変化など理論で説明できる以上に大きく揺れる現象。シラーが1981年に示した。

LESSON 11-1 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. 効率的市場仮説の考え方に合うものはどれですか。

答えを見る

正解: 1. 新しい情報はすぐ価格に取り込まれるので、短期の値動きは予測しにくい
ここがポイント。情報がすばやく価格に入るので、すでに出た情報だけでは数日や数週間先を当てられない、と考えます。

Q2. シラーの1981年の研究でわかったことはどれですか。

答えを見る

正解: 2. 株価の揺れは、配当の変化で説明できるより大きかった
配当から計算した値段はなめらかでしたが、実際の株価は大きく上下していました。これを過剰変動と呼びます。

日常の場面で考える

Q3. 友人が「2013年のノーベル賞で、市場は効率的だと決着したんだよ」と言いました。どう答えるのが正確ですか。

答えを見る

正解: 3. 効率的市場のファーマと行動ファイナンスのシラーが同時に受賞しており、どちらかに決着したわけではない
惜しい考え方ですが、受賞者は立場の違うファーマとシラー、そしてハンセンの3人でした。どちらがどれだけ正しいかは、まだはっきりしていません。

レッスン11-1はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第11章 行動ファイナンス のレッスン一覧
  1. 11-1行動ファイナンス
  2. 11-2気質効果
  3. 11-3自信過剰と売買
  4. 11-4近視眼的損失回避

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出典(3件)
  1. The Royal Swedish Academy of Sciences (2013). Press release: The Prize in Economic Sciences 2013(受賞者・受賞理由・短期と長期の予測可能性)
  2. The Royal Swedish Academy of Sciences (2013). Popular information: Trendspotting in asset markets(イベント研究、Shiller 1981の過剰変動、行動ファイナンスの説明と残された課題)
  3. Shiller, R. J. (1981). Do Stock Prices Move Too Much to be Justified by Subsequent Changes in Dividends? American Economic Review, 71(3), 421-436.(巻号・ページはJSTOR掲載の原論文で確認。リンク先は1980年のNBER Working Paper No. 456版)