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第8章 社会的選好 ・ レッスン8-3公平さと値上げ。雨の日の傘はなぜ値上げしにくいのか
約5分 ・ 公開日 2026-10-06
このレッスンの問い
急な雨の日、駅前の店が傘を500円から1,000円に値上げしていたら、あなたはどう感じますか?「仕入れ値が上がったから」なら、印象は変わるでしょうか。読む前に予想してみましょう。
読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。
前のレッスンの復習(1問)
本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。
Q1. 最後通牒ゲームで、多くの受け手に見られた行動はどれでしたか。
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正解: 1. 自分が損をしても、不公平な提案を断る
ここがポイントです。断れば自分も0になるのに、不公平な提案を断る人が多くいました。人がお金だけでなく公平さも気にしている証拠でした。
01需要が増えただけの値上げは、不公平に見える
欲しい人が増えたことだけを理由に値上げすると、多くの人はそれを不公平だと感じます。
カーネマン、クネッチ、セイラーの3人は、1984年5月から1985年7月に、カナダのトロントとバンクーバーで電話調査をしました。架空の店の値段の付け方を聞かせ、公平かどうかを答えてもらったのです。
有名なのが雪かきシャベルの質問です。15ドルで売っていた店が、大雪の翌朝に20ドルへ値上げする。回答者107人のうち82%が、これを不公平だと答えました。
雨の日の傘も同じ形をしています。欲しい人が急に増えたところで値上げすると、店が客の困りごとで得をしているように見えるのです。論文は、こうした反発が、店が値上げを控える理由の一つになると考えました。
02ものさしは「いつもの取引」
公平かどうかは、いつもの値段や利益と比べて決まり、費用が上がった分の値上げは受け入れられやすくなります。
論文は、判断の基準になるふだんの取引を参照取引と呼びました。第5章で学んだ参照点の、取引版と考えると分かりやすいでしょう。
客には「いつもの値段」で買う権利があり、店には「いつもの利益」を守る権利がある。多くの人は、こう考えているようでした。そのため、仕入れ値が30セント上がったレタスを30セント値上げしても、不公平と答えた人は21%でした。
惜しいのは、費用ならいつでも通るわけではない点です。前から店にある在庫のピーナッツバターを、仕入れ値上昇の知らせだけで値上げすると、79%が不公平と答えました。
03品不足につけこむ転売は、社会問題になる
品不足のときの便乗値上げや高額転売は社会問題になり、日本では高額転売が法律に基づいて規制されたこともあります。
2020年、新型コロナウイルスの流行でマスクが品薄になり、高額転売が目立ちました。そこで国民生活安定緊急措置法に基づく政令で、マスクは3月15日から、アルコール消毒製品は5月26日から、高額転売が禁止されました。
禁止されたのは、買った値段を超える価格で、不特定または多数の人に売ることです。違反には、当時の規定で1年以下の懲役か100万円以下の罰金が定められていました。供給が増えて店で買えるようになり、同じ年の8月29日に解除されています。
なお、3人の調査は架空の場面への意見です。実際の買い物で人がどこまで同じように動くかは、この調査だけでは分かりません。
| 場面 | 値上げの理由 | 不公平と答えた割合 | 回答者数 |
|---|---|---|---|
| 大雪の翌朝、シャベルを15ドルから20ドルに | 欲しい人が増えた | 82% | 107人 |
| 品薄のりんごを、仕入れ値は同じまま25%値上げ | 品薄 | 63% | 102人 |
| 品切れの人気人形1体を、店内のオークションで売る | 品薄 | 74% | 101人 |
| 仕入れ値が30セント上がったレタスを、30セント値上げ | 費用が増えた | 21% | 101人 |
| 前からある在庫を、仕入れ値上昇の知らせで値上げ | 費用(ただし在庫は前の値段で仕入れ済み) | 79% | 147人 |
あなたの場合は?
最近、「この値上げは仕方ない」と思えたものと、「これは納得できない」と感じたものはありますか?そのとき、心の中で何と比べていたか思い出してみましょう。
答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。
覚えるのはこの3つ
- 欲しい人が増えただけの値上げを、多くの人は不公平と感じる(大雪の翌朝のシャベル値上げは82%が不公平と回答)
- 公平かどうかは、いつもの取引(参照取引)と比べて決まる。費用が上がった分の値上げは受け入れられやすい
- 品不足につけこむ高額転売は社会問題になり、2020年にはマスクと消毒製品の高額転売が政令で一時禁止された
TERMSこのレッスンの用語
値段や賃金が公平かどうかを判断するときに基準にする、ふだんの取引。いつもの値段と、店のいつもの利益を含む。
客はいつもの条件で取引する権利を、店はいつもの利益を守る権利を持つ、という多くの人の公平さの感覚。
災害や品不足で欲しい人が急に増えたときに、それにつけこんで費用の増加を超えて値上げすること。
LESSON 8-3 の確認
確認問題(全3問)
本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。
Q1. 1986年の論文の電話調査で、大雪の翌朝に雪かきシャベルを15ドルから20ドルに値上げした店について、不公平と答えた人の割合はどれでしたか。
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正解: 3. 約8割
回答者107人のうち82%が不公平と答えました。欲しい人が増えただけの値上げは、多くの人に受け入れられませんでした。
Q2. 調査で、不公平と答えた人がいちばん少なかった値上げはどれですか。
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正解: 2. 仕入れ値が上がった分だけ、レタスを値上げする
費用が上がった分の値上げは、店のいつもの利益を守るためと受け取られ、不公平と答えた人は21%でした。ほかの2つは品薄につけこむ形で、6〜7割が不公平と答えています。
Q3. あなたは地域の八百屋です。台風で野菜の仕入れ値が上がりました。本文の調査から考えて、客に受け入れられやすい値上げはどれですか。
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正解: 1. 仕入れ値が上がった分だけ値上げする
いつもの利益を守る範囲の値上げは、公平と受け取られやすくなります。品薄につけこむ値上げや、前の値段で仕入れた在庫の値上げは、不公平と感じる人が多い形でした。