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第6章 メンタル・アカウンティング(心の会計) ・ レッスン6-3

ハウスマネー効果とは?もうけたお金は使いやすい

約5分 ・ 公開日 2026-10-06

このレッスンの問い

宝くじで当たった3万円と、給料から出す3万円。同じように慎重に使えますか?読む前に予想してみましょう。

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン6-2から

Q1. 同じ1000円の値引きでも、得に感じやすいのはどちらでしたか。

答えを見る

正解: 1. 2000円の品が1000円引きになるとき
ここがポイントです。人は金額そのものより割合で比べがちなので、元の値段が安いほど同じ1000円を大きく感じます。

01もうけたお金は、気軽に賭けやすい

直前にもうけた人は、もうけ分を減らすだけと感じて、賭けに出やすくなります。

セイラーとジョンソンは1990年、コーネル大学のMBA学生に「あなたは30ドルもうけました」と伝えてから選んでもらいました。半々の確率で9ドル増えるか減るかの賭けか、何もしないかです。

ある回では70%が賭けを選びました。ところが「確実に30ドル」か「半々で39ドルか21ドル」かと一度に示すと、賭けは43%でした。手に入る金額は同じなのに、答えが変わったのです。

負けても、もうけの一部が減るだけに感じるからだと著者たちは考えました。カジノの胴元のお金で遊ぶ気分になぞらえて、これをハウスマネー効果と呼びます。

02損の後は慎重に。でも取り戻せる賭けには乗る

30ドル損した後は賭けを避ける人が多い一方、損を取り戻せる賭けは選ばれやすくなりました。

30ドル損した後に、同じ半々で9ドル増減する賭けを選んだのは40%でした。ところが「確実に10ドル」と「3分の1の確率で30ドル」なら、60%が賭けを選びました。

後者だけが、勝てば損を帳消しにできます。元に戻れる選択肢に強く引かれるこの傾向を、損益分岐効果(ブレークイーブン効果)と呼びます。4-2で学んだ「損の場面ではリスクを取る」は、こうした場面で目立つと著者たちは考えました。

ただし2025年、アメリカのオンライン参加者約500人による追試では、もうけた後に賭けを選んだ人は28%で、元の結果は再現されませんでした。損の後の2つの賭けも17%と24%にとどまり、取り戻せる賭けがやや多い向きだけが同じでした。どんな条件で起きるのかは、まだはっきりしていません。

03臨時収入も、給料と同じお金

思いがけず入ったお金ほど使いやすいので、給料と同じお金だと考え直すのが対策です。

1994年の実験では、謝礼を当日まで知らされなかった学生のほうが、賭けのゲームで多く賭けました。予想していなかったお金ほど、使いやすいと考えられています。

内閣府は2009年の定額給付金の使われ方を調べました。1世帯平均44,840円のうち、消費に回ったのは平均64.5%で、使いみちは教養娯楽が37.6%と最多でした。ただ、給料より使いやすかったかは、この調査だけでは分かりません。

臨時収入が入ったら、まず「給料の分だったら何に使う?」と自分に聞いてみましょう。名札をはがして考えるだけで、使いみちを落ち着いて選べます。

直前の出来事選ぶもの賭けを選んだ割合
30ドルもうけた半々で9ドル増減する賭け/何もしない70%
(同じ中身を一度に示す)半々で39ドルか21ドル/確実に30ドル43%
30ドル損した半々で9ドル増減する賭け/何もしない40%
30ドル損した3分の1の確率で30ドル/確実に10ドル60%
直前の得と損で、賭けを選ぶ割合が変わった(Thaler & Johnson 1990 の表5、コーネル大学MBA学生への仮定の質問のうち各1回分。2025年の追試では1行目は28%、4行目は24%で、どちらも再現されなかった)

あなたの場合は?

最近、ポイント還元やおまけ、思いがけない臨時収入で、いつもより気軽に買ったものはありますか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 賭けで勝ったお金や臨時収入は、手持ちのお金より気軽に使ったり賭けたりしやすい(ハウスマネー効果)。ただし追試で再現されなかった例もある
  2. 損をした直後は慎重になりやすいが、損を帳消しにできる選択肢には賭けやすい(損益分岐効果)
  3. 臨時収入も給料と同じお金。「給料だったら何に使う?」と考え直す

TERMSこのレッスンの用語

ハウスマネー効果House money effect

直前にもうけたお金は失っても痛みが小さく感じられ、賭けや出費に使いやすくなる傾向。

損益分岐効果(ブレークイーブン効果)Break-even effect

損をした後、勝てば損を帳消しにできる選択肢に特に引かれ、賭けに出やすくなる傾向。

臨時収入(ウィンドフォール)Windfall gain

宝くじの当せん金や予想外の謝礼など、思いがけず入ってくるお金。

LESSON 6-3 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. セイラーとジョンソンの実験で「30ドルもうけた後」と伝えられた学生について、本文の内容に合うものはどれですか。

答えを見る

正解: 1. 半々で9ドル増減する賭けを選んだ人が70%いた回があった
もうけの後に分けて示すと70%が賭けを選び、一度に示すと43%でした。中身は同じでも、示し方で答えが変わったのがポイントです。

Q2. 30ドル損した後、賭けを選ぶ人が多かったのはどちらの場面ですか。

答えを見る

正解: 2. 3分の1の確率で30ドルもらえる賭けか、確実に10ドルかを選ぶ場面
惜しい人も多い問題です。損を帳消しにできる賭けは60%、そうでない賭けは40%でした。元に戻れる選択肢に引かれるのが損益分岐効果です。

日常の場面で考える

Q3. 思いがけず5万円の臨時収入がありました。このレッスンの考え方に最も合う行動はどれですか。

答えを見る

正解: 2. 給料の5万円だったら何に使うかを考えてから、使いみちを決める
臨時収入も給料と同じお金です。いったん名札をはがし、給料だったらどうするかと考えると、落ち着いて選べます。

レッスン6-3はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第6章 メンタル・アカウンティング(心の会計) のレッスン一覧
  1. 6-1心の会計
  2. 6-2相対的思考
  3. 6-3ハウスマネー効果
  4. 6-4サンクコスト

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出典(4件)
  1. Thaler, R. H., & Johnson, E. J. (1990). Gambling with the house money and trying to break even: The effects of prior outcomes on risky choice. Management Science, 36(6), 643-660.
  2. Li, M., & Feldman, G. (2025). Revisiting mental accounting classic paradigms: Replication Registered Report of the problems reviewed in Thaler (1999). Royal Society Open Science, 12(9), 250979.
  3. Arkes, H. R., Joyner, C. A., Pezzo, M. V., Nash, J. G., Siegel-Jacobs, K., & Stone, E. (1994). The psychology of windfall gains. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 59(3), 331-347.
  4. 内閣府「『定額給付金に関連した消費等に関する調査』の結果について」(2010年1月15日公表)