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第6章 メンタル・アカウンティング(心の会計) ・ レッスン6-2

同じ1000円の値引きでも、感じ方が変わるのはなぜか

約5分 ・ 公開日 2026-10-06

このレッスンの問い

2000円のTシャツが1000円引き。10万円のパソコンが1000円引き。どちらも隣町の店まで20分かかるとしたら、行く気になるのはどちらですか?先に予想してみてください。

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン6-1から

Q1. 劇場で、10ドルの現金を落とした人と、10ドルのチケットを失くした人。チケットを買い直すと答えた人が少なかったのはどちらでしたか。

答えを見る

正解: 1. チケットを失くした人
チケットを失くした人は、買い直すと「観劇の口座」で20ドル払う気がしてしまいます。現金はどこから出ても同じ価値なのに、口座が違うと別物に感じる。ここがポイントでした。

01同じ5ドルでも、元の値段で重みが変わる

同じ金額の節約でも、元の値段が安いと大きく、高いと小さく感じます。

トベルスキーとカーネマンは1981年、学生にこんな問いを出しました。上着と電卓を買う予定で、電卓が20分先の支店では5ドル安い。あなたは支店まで行きますか、という問いです。

電卓が15ドルで10ドルになる場合、行くと答えた人は68%でした。ところが電卓が125ドルで120ドルになる場合は、29%しかいませんでした。

どちらも「20分かけて5ドル得をするか」という同じ選択です。違うのは、5ドルが元の値段に対してどれだけの重みかだけでした。

02人は金額より割合で比べがち

人は節約を、金額そのものではなく、元の値段に対する割合で感じがちです。

15ドルの5ドルは3分の1ですが、125ドルの5ドルは4%です。二人は、5ドルを「電卓の買い物」という口座の中で評価したからだと説明しました。6-1で学んだ心の口座が、ここでも働いています。

4-2で学んだ価値関数のカーブも関係します。額が大きくなるほど同じ差を小さく感じるので、高い値段の上では5ドルが目立たないのです。

経済学から見ると、比べるべきは5ドルと20分の手間だけです。それでも割合に引っぱられる心の傾向を、相対的思考と呼びます。その後、同じ傾向を報告した研究がいくつもあります。

ただし2025年の追試では、金額を当時のままにすると、支店へ行く人は11%と7%とどちらも少なく、はっきりした差は出ませんでした。実際の買い物でどこまで強く出るかは、まだはっきりしていません。

03高い買い物の「ついで」は軽く見える

高い買い物をしている最中は、数千円や数万円の追加の出費が小さく見え、財布のひもがゆるみます。

1981年の論文は、家や車のような大きな買い物の最中には、お金の価値が一時的に下がったように感じると述べています。小さな値引きが気にならず、余分な出費もしやすくなるのです。

たとえば300万円の車を買うとき、5万円のオプションは「たった2%」に見えます。でも同じ5万円を、ふだんの買い物で気軽に使うでしょうか。使わない装備を付ければ、お金だけでなく資源もむだになります。

対策は、割合を捨てて金額だけを見ることです。「この5万円を、単独で払うとしても買うか」と自分に聞いてみましょう。

電卓の値段支店での値段節約額の割合20分かけて支店へ行く人
15ドル(93人)10ドル約33%68%
125ドル(88人)120ドル4%29%
ジャケットと電卓の問題(Tversky & Kahneman 1981 の問題10をもとに作成。金額はドル。スタンフォード大学とブリティッシュ・コロンビア大学の学生が、想像の場面に答えたもの)

あなたの場合は?

最近の大きな買い物で、「本体が高いから、これくらいは」と付け足したオプションや付属品はありませんでしたか?それを単独で買うとしたら、今も買いますか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 同じ5ドルの節約でも、15ドルの電卓なら68%、125ドルの電卓なら29%が20分かけて支店へ行くと答えた(Tversky & Kahneman 1981)
  2. 人は節約を金額そのものより元の値段に対する割合で感じがち。これを相対的思考と呼ぶ
  3. 高い買い物の最中は追加の出費が小さく見える。「単独で払っても買うか」と金額だけで考える

TERMSこのレッスンの用語

相対的思考Relative thinking

経済学では金額の差だけが大事な場面でも、元の値段に対する割合(相対的な差)に影響されてしまう心の傾向。

LESSON 6-2 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. ジャケットと電卓の問題で、20分かけて支店へ行くと答えた人が多かったのはどちらの場合ですか。

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正解: 1. 15ドルの電卓が10ドルになる場合
15ドルの電卓では68%、125ドルの電卓では29%でした。節約額はどちらも5ドルなのに、元の値段が安いほうが得に感じられたのです。

Q2. 相対的思考の説明として、正しいものはどれですか。

答えを見る

正解: 1. 節約を、金額そのものより元の値段に対する割合で感じがちな傾向
相対的思考は、同じ金額の差でも割合が小さいと軽く感じてしまう傾向です。惜しいのは2つめで、これは値段と品質の思いこみの話で、このレッスンの内容ではありません。

日常の場面で考える

Q3. 新しい家の契約中に、営業担当から「全体の1%ほどです」と30万円のオプションをすすめられました。相対的思考の落とし穴を避ける考え方はどれですか。

答えを見る

正解: 2. 30万円を単独で払うとしても欲しいかどうかで決める
ここがポイントです。家全体と比べると30万円は小さく見えますが、出ていくお金は30万円のままです。割合ではなく金額で、単独でも買うかを考えましょう。

レッスン6-2はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第6章 メンタル・アカウンティング(心の会計) のレッスン一覧
  1. 6-1心の会計
  2. 6-2相対的思考
  3. 6-3ハウスマネー効果
  4. 6-4サンクコスト

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出典(4件)
  1. Tversky, A., & Kahneman, D. (1981). The framing of decisions and the psychology of choice. Science, 211(4481), 453-458.(問題8・9・10、心の口座、大きな買い物でのお金の価値の一時的な低下)
  2. Azar, O. H. (2011). Relative thinking in consumer choice between differentiated goods and services and its implications for business strategy. Judgment and Decision Making, 6(1), 176-185.(相対的思考の定義、Thaler 1980 の推測と、その後の再現研究のまとめ)
  3. The Committee for the Prize in Economic Sciences in Memory of Alfred Nobel (2017). Richard H. Thaler: Integrating Economics with Psychology. Scientific Background.(Thaler 1999 がジャケットと電卓の問題で心の会計の文脈依存を説明したこと)
  4. Li, M., & Feldman, G. (2025). Revisiting mental accounting classic paradigms: Replication Registered Report of the problems reviewed in Thaler (1999). Royal Society Open Science, 12(9), 250979.(ジャケットと電卓の問題の追試)