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第6章 メンタル・アカウンティング(心の会計) ・ レッスン6-4

サンクコストとは?取り戻せない費用にこだわってしまう理由

約5分 ・ 公開日 2026-10-06

このレッスンの問い

100ドル払った旅行と、50ドルでももっと楽しめそうな旅行。日程が重なったら、どちらに行きますか?読む前に予想してみてください。

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン6-3から

Q1. ハウスマネー効果の研究で、賭けで勝った直後の人に起きやすいことはどれでしたか。

答えを見る

正解: 1. もうけたお金なら、普段より気軽に賭けに出る
勝ったお金は「もともと自分のお金ではない」と感じ、気軽に賭けやすくなります。直前の得失でリスクの取り方が変わる、という点がポイントでした。

01やめられないのは、もう払ったから

人は、もう払って取り戻せないお金や時間にこだわり、やめたほうがよいことを続けてしまいがちです。

すでに払ってしまい、どうしても取り戻せない費用をサンクコスト(埋没費用)と呼びます。お金だけでなく、かけた時間や手間も含まれます。

アークスとブルーマーは1985年、この費用に引きずられる傾向を確かめました。100ドルのスキー旅行と、もっと楽しめそうな50ドルの旅行が同じ週末に重なったら、どちらに行くかという問題です。

どちらの券も払い戻せないので、楽しめそうな50ドルの旅行を選ぶのが合理的です。ところが学生61人のうち、50ドルの旅行を選んだのは28人(46%)だけでした。

02本物のお金でも、仕事の判断でも起きる

実際のチケット販売でも、会社の判断を問う問題でも、同じ傾向が確かめられています。

研究者は、オハイオ大学の劇場で1982〜1983年の年間券を買いに来た人に、15ドル・13ドル・8ドルの券をランダムに売り分けました。最初の半年は、定価で買った人のほうが多く観劇しました。ただし後半の半年には、差は見られませんでした。

完成間近の飛行機の開発に、残りの費用を出すかという問題もあります。すでに多額を投資済みの場合は85%が続けると答え、まだ投資していない場合は17%でした。

税金を使う公共事業でも起きます。1981年のアメリカでは、巨額の運河事業をめぐり、議員が「今やめたら投じた税金がむだになる」と続行を訴えました。

03「むだにしたくない」が判断を曲げる

原因の一つは「むだにしたくない」という気持ちで、対策はこれから先の得と損だけで比べることです。

研究者は、やめると前の出費がむだだったと認めることになり、それがつらいから続けるのだと考えました。経済学の授業を受けた学生でも、この傾向は弱まりませんでした。

1999年の論文では、幼い子どもは大人ほどこの誤りをしないという結果が紹介されています。「むだにするな」という大切な教えを、大人が当てはまらない場面にまで広げてしまうためだと説明されています。

ここがポイントです。払ったお金は、続けてもやめても戻りません。迷ったら「今から始めるとしたら選ぶか」と考え、その時間で他にできること(機会費用)も含めて比べてみましょう。

実験状況結果
スキー旅行(質問)100ドルの旅行と、より楽しめそうな50ドルの旅行が重なる50ドルの旅行を選んだのは61人中28人(46%)
劇場の年間券(実際の販売)15ドル・13ドル・8ドルの券をランダムに販売最初の半年に使った券は、定価組が平均4.11枚、割引の2組は3.32枚と3.29枚
飛行機の開発(質問)性能で負けると分かった開発に、残りの費用を出すか投資済みなら48人中41人、未投資なら60人中10人が「出す」
サンクコストを確かめた3つの実験(Arkes & Blumer 1985 をもとに作成)

あなたの場合は?

「ここまでお金や時間をかけたから」という理由だけで続けている習い事・サブスク・仕事の企画はありますか?今から始めるとしたら、それを選びますか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. サンクコストとは、もう払って取り戻せないお金・時間・手間。人はこれにこだわり、やめるべきことを続けやすい(スキー旅行・劇場の年間券の実験)
  2. 原因の一つは「むだにしたくない」気持ち。前の出費がむだだったと認めるのがつらい
  3. 払った分は続けてもやめても戻らない。これから先の得と損(機会費用も含む)だけで比べる

TERMSこのレッスンの用語

サンクコスト(埋没費用)Sunk cost

すでに払ってしまい、取り戻すことのできないお金・時間・手間。これからの判断には本来関係しない。

コンコルド効果Concorde effect

サンクコストにこだわり、やめるべきことを続けてしまう傾向の別名。動物の行動を論じる分野ではコンコルドの誤りとも呼ばれる。

機会費用Opportunity cost

ある選択をしたために、あきらめることになった次に良い選択肢の価値。

LESSON 6-4 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. サンクコストの説明として正しいものはどれですか。

答えを見る

正解: 1. すでに払って、取り戻すことのできない費用
サンクコストは、続けてもやめても戻らない費用です。これから払う費用や、返ってくるお金はサンクコストではありません。

Q2. 劇場の年間券の実験で分かったことはどれですか。

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正解: 2. 定価で買った人のほうが、最初の半年に多く観劇した
高く払った人ほど、最初の半年によく劇場へ通いました。惜しいのは3つめで、差が消えたのは後半の半年だけです。

日常の場面で考える

Q3. 地域の祭りの準備に3年かけてきましたが、続けると赤字が大きく増えると分かりました。サンクコストにとらわれない考え方はどれですか。

答えを見る

正解: 3. これから先にかかる費用と、得られるものだけで決める
かけてきた3年は、開催してもやめても戻りません。ここがポイントで、これから先の費用と得だけで比べるのが合理的な判断です。

レッスン6-4はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第6章 メンタル・アカウンティング(心の会計) のレッスン一覧
  1. 6-1心の会計
  2. 6-2相対的思考
  3. 6-3ハウスマネー効果
  4. 6-4サンクコスト

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出典(3件)
  1. Arkes, H. R., & Blumer, C. (1985). The psychology of sunk cost. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 35(1), 124-140.
  2. Arkes, H. R., & Ayton, P. (1999). The sunk cost and Concorde effects: Are humans less rational than lower animals? Psychological Bulletin, 125(5), 591-600.
  3. OpenStax (Rice University). Principles of Microeconomics 2e, 2.1 How Individuals Make Choices Based on Their Budget Constraint(機会費用とサンクコストの定義)