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第7章 時間割引と現在バイアス ・ レッスン7-1

時間割引とは?なぜ将来のお金は小さく感じるのか

約5分 ・ 公開日 2026-10-06

このレッスンの問い

今日もらえる1万円と、1年後にもらえる1万円。どちらを選びますか?1年後にいくらなら待てるか、先に考えてみてください。

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

01将来のお金は小さく見える

同じ金額でも、受け取りが先になるほど価値を小さく感じます。これを時間割引と呼びます。

今日の1万円と1年後の1万円なら、ほとんどの人が今日を選びます。1年後に1万円より多くもらえるなら待つ、という人が多いでしょう。

先のことほど軽く見るこの傾向を、時間割引と呼びます。理由はいくつかあり、本当にもらえるか分からない不安も、その一つです。

研究者は、こうした理由をすべて含めて時間割引と呼びます。その中でも「とにかく今がいい」という気持ちそのものは、時間選好と呼んで区別します。

02割引の強さは人や場面でばらばら

どれくらい将来を割り引くかは、金額・場面・測り方によって大きく変わります。

どれくらい割り引くかは、金額や得か損かでも変わります。セイラーの1981年の調査では、少ない金額ほど強く割り引かれ、得は損より強く割り引かれました。下の表に、こうした違いの例をまとめました。

Frederick らの2002年の総説は、多くの研究の推定を並べて比べました。1年あたりの割引の推定はマイナス6%から無限大まで大きくばらつき、年を追っても幅は縮まっていませんでした。

お金と健康の割引の強さには、弱い関係しかないという研究もあります。断熱工事のように、費用は今で節約は何年も先という対策が後回しにされやすいのも、この傾向から考えられます。ただし、情報が足りないといった別の理由が重なることもあります。

03マシュマロ実験は追試で小さくなった

待てた子が将来うまくいくという有名な結果は、追試では関係がずっと小さくなりました。

1960年代末から、ミシェルらはスタンフォード大学の幼稚園で実験をしました。お菓子を今1つ食べるか、待って2つもらうかを選ばせ、待てた時間を測ったのです。

1989年の論文では、4歳で長く待てた子ほど、思春期に学業などで力を発揮していたと報告されました。待つ力を満足の遅延と呼び、この実験は広く知られるようになりました。

ところが2018年、ワッツらは約900人のデータで追試しました。母親が大学を出ていない子に絞ると、関係の強さは元の研究の半分ほどでした。家庭環境などをそろえるとさらに3分の2ほど小さくなり、将来をどこまで左右するのかはまだはっきりしていません。

何が違うとわかったこと研究の例
金額少ない金額ほど強く割り引くセイラー(1981年): 今の250ドルと1年後の350ドル、今の3000ドルと1年後の4000ドルが同じくらいと答えた(平均)
得か損か得は損より強く割り引くセイラー(1981年): 罰金の支払いを先に延ばす場合の割引は、受け取る場合よりずっと小さかった
遅らせるか早めるか遅らせるときのほうが強く割り引くローウェンスタイン(1988年): ビデオデッキを1年早めるには平均54ドル払うが、1年遅らせるには平均126ドルを求めた
割引の強さが変わる場面の例(Frederick, Loewenstein & O'Donoghue 2002 の整理による)

あなたの場合は?

「いつかやればお得になる」と分かっていても、後回しにしていることはありますか?費用と効果が来る時期を書き出してみましょう。

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 同じ金額でも、受け取りが先になるほど価値を小さく感じる。これが時間割引
  2. 割引の強さは、金額・場面・測り方で大きく変わる。少額ほど強く割り引きやすい
  3. マシュマロ実験は有名だが、追試では将来との関係が小さくなった。どこまで左右するかはまだはっきりしていない

TERMSこのレッスンの用語

時間割引Time discounting

受け取りが先になるほど、同じものの価値を小さく感じること。不確かさなど、将来を軽く見るあらゆる理由を含む広い言葉。

時間選好Time preference

時間割引の理由のうち、後よりも今すぐを好む気持ちそのもの。

満足の遅延Delay of gratification

目の前の小さな報酬をがまんして、後のより大きな報酬を待つこと。マシュマロ実験で測られた。

LESSON 7-1 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. 時間割引の説明として正しいものはどれですか。

答えを見る

正解: 1. 同じ金額でも、受け取りが先になるほど価値を小さく感じる
ここがポイントです。先のことほど軽く見る傾向を時間割引と呼びます。

Q2. セイラーの1981年の調査でわかったこととして、正しいものはどれですか。

答えを見る

正解: 1. 少ない金額ほど、強く割り引かれた
惜しい人も多い問題です。今の250ドルなら1年後に350ドル、今の3000ドルなら4000ドルと、金額が大きいほど上乗せの割合は小さくなりました。

日常の場面で考える

Q3. 市の窓口で、家の断熱工事に補助金が出ると知りました。光熱費は何年もかけて下がりますが、工事費は今かかります。申し込みを先送りしやすい理由として、このレッスンに合うのはどれですか。

答えを見る

正解: 1. 将来の節約を小さく感じ、今の出費を大きく感じるから
ここがポイントです。費用は今、効果は先という対策は、時間割引によって後回しにされやすいと考えられます。

レッスン7-1はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第7章 時間割引と現在バイアス のレッスン一覧
  1. 7-1時間割引
  2. 7-2現在バイアス
  3. 7-3プランナー・ドーアー・モデル
  4. 7-4コミットメント

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出典(4件)
  1. Frederick, S., Loewenstein, G., & O'Donoghue, T. (2002). Time Discounting and Time Preference: A Critical Review. Journal of Economic Literature, 40(2), 351-401.
  2. Mischel, W., Shoda, Y., & Rodriguez, M. L. (1989). Delay of gratification in children. Science, 244, 933-938.
  3. Watts, T. W., Duncan, G. J., & Quan, H. (2018). Revisiting the Marshmallow Test: A Conceptual Replication Investigating Links Between Early Gratification Delay and Later Outcomes. Psychological Science, 29(7), 1159-1177.
  4. Stanford University Bing Nursery School. Nearly 40 years later, Bing study still going(マシュマロ実験の実施時期と方法)