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第4章 プロスペクト理論と損失回避 ・ レッスン4-4確率の重みづけとは?小さな確率を大きく感じる理由
約5分 ・ 公開日 2026-10-06
このレッスンの問い
「5%で1万円もらえる」くじに、あなたならいくらまで払いますか?平均すると500円の価値です。先に予想してから読みましょう。
読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。
前のレッスンの復習(1問)
本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。
Q1. 損失回避の研究では、五分五分の賭けで1万円負ける可能性があるとき、多くの人は勝ったときにいくらもらえれば受けると考えられていましたか。
答えを見る
正解: 2. 約2万円(負けの約2倍)
失う痛みは得る喜びより大きいので、負けの額の約2倍勝てないと割に合わないと感じる人が多いのでしたね。Tversky & Kahneman(1992)では、五分五分で100ドル失う賭けを受けるのに、勝ちが202ドル必要という結果(中央値)でした。
01小さな確率は大きく、大きな確率は小さく感じる
人は確率をそのままの重さで使わず、小さな確率を実際より重く、中くらいから大きな確率を実際より軽く扱いやすいです。
カーネマンとトベルスキーは、人が確率に心の中で重みをつけ直してから選んでいると考えました。この心の中の重みを、確率の重みづけと呼びます。
1992年の研究では、小さな確率は実際より重く、中くらいから大きな確率は実際より軽く扱われていました。そのため、真ん中あたりの確率の差には鈍くなります。
これは確率を読み違えることとは別です。5%と正しく知っていても、選ぶときの重みが5%分より大きくなるのです。ただ1979年の論文は、ごくまれな出来事は無視される場合もあると書いています。
02「確実」は特別に重い
確率が100%になると、その選択肢は特に重く感じられます。これを確実性効果と呼びます。
1979年の論文の質問を見てみましょう。「80%で4000もらえる」か「確実に3000もらえる」かでは、95人の80%が確実なほうを選びました。金額はイスラエルの通貨です。
ところが、確率をどちらも4分の1にして「20%で4000」か「25%で3000」にすると、65%が4000のほうを選びました。確率の比は同じなのに、好みが逆転したのです。
期待効用理論では、この逆転は起きないはずでした。100%から25%への下がり方は、80%から20%より大きく感じられます。この傾向が確実性効果で、1953年にアレが示した例はアレのパラドックスと呼ばれます。
03宝くじを買い、保険にも入る理由
小さな確率を重く見る傾向は、宝くじの人気と保険の人気の両方を説明する手がかりの一つです。
1992年の研究では、得か損か、確率が小さいか大きいかで、選び方が4通りに分かれました。これをリスク態度の4つのパターンと呼びます。下の表で確かめましょう。
小さな確率で得をする場面では、平均より高い値をつけて賭けを好み、これが宝くじに当たります。小さな確率で大きく損をする場面では、少し払ってでも避けたがり、これが保険に当たります。
日本の宝くじでは、2024年度の売上のうち当せん金に回ったのは46.5%でした。売上全体で見れば、300円分買うと平均で約140円が戻る計算です。夢を買う楽しみもあるので、重みづけだけで全部は説明できません。
確実性効果から考えると、「必ず」「確実に増える」といった言葉には引かれやすいと予想できます。確実と言われたときほど、本当に確実なのかを確かめましょう。
| 場面 | 賭けの中身 | 平均すると | 同じ価値と感じた確実な額 | 選び方 |
|---|---|---|---|---|
| 小さな確率で得 | 5%で100ドルもらえる | 5ドル | 14ドル | 賭けを好む(宝くじ型) |
| 大きな確率で得 | 95%で100ドルもらえる | 95ドル | 78ドル | 確実を好む |
| 小さな確率で損 | 5%で100ドル失う | マイナス5ドル | マイナス8ドル | 確実な小さな損を好む(保険型) |
| 大きな確率で損 | 95%で100ドル失う | マイナス95ドル | マイナス84ドル | 賭けを好む |
あなたの場合は?
家電の延長保証や「必ずもらえる」特典など、確率の言葉に引かれて決めたことはありませんか?そのとき、平均するといくらの価値だったか考えてみましょう。
答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。
覚えるのはこの3つ
- 人は小さな確率を実際より重く、中くらいから大きな確率を実際より軽く感じやすい(確率の重みづけ)
- 確率が100%になると特に重く感じる(確実性効果)。80%と確実なら確実を選ぶ人が多いが、20%と25%にすると好みが逆転する
- 得か損か、確率の大小で選び方は4通り。小さな確率を重く見ることが、宝くじと保険が両方売れる理由の一部になる
TERMSこのレッスンの用語
人が選ぶときに、確率をそのままではなく心の中で重みをつけ直して使うこと。小さな確率は重く、大きな確率は軽くなりやすい。
確実に得られる結果を、確率の高いだけの結果よりも特に重く見る傾向。
フランスの経済学者アレが1953年に示した、確実な選択肢があると期待効用理論と合わない選び方が起きる例。
LESSON 4-4 の確認
確認問題(全3問)
本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。
Q1. 1992年の研究で示された確率の重みづけとして、正しいものはどれですか。
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正解: 1. 小さな確率を実際より重く、中くらいから大きな確率を実際より軽く扱う
ここがポイントです。小さな確率は重く、中くらいから大きな確率は軽くなります。その結果、真ん中あたりの確率の差には鈍くなります。
Q2. 1979年の論文で、「20%で4000」と「25%で3000」から選ぶ問題では、多くの人はどちらを選びましたか。
答えを見る
正解: 2. 20%で4000(確実がないと好みが逆転した)
65%が「20%で4000」を選びました。「確実に3000」なら80%が確実を選んだのに、確実がなくなると好みが逆転します。確実性効果の例です。
Q3. 店で家電を買うとき、「故障はめったにありませんが」と言われつつ延長保証をすすめられ、つい入りたくなりました。本文の考え方に合う見方はどれですか。
答えを見る
正解: 1. 小さな故障の確率が心の中で重くなり、払ってでも避けたくなりやすい
小さな確率で損をする場面では、少し払ってでも避けたがるのでしたね。保険型のパターンです。入るかどうかは、平均するといくらの価値かを考えてから決めましょう。
出典(4件)
- Kahneman, D. & Tversky, A. (1979). Prospect Theory: An Analysis of Decision under Risk. Econometrica, 47(2), 263-291(確実性効果、問題3・4の回答割合、小さな確率の重みづけ)
- Tversky, A. & Kahneman, D. (1992). Advances in Prospect Theory: Cumulative Representation of Uncertainty. Journal of Risk and Uncertainty, 5, 297-323(4つのパターン、表3、確率の重みづけ)
- Stanford Encyclopedia of Philosophy「Normative Theories of Rational Choice: Expected Utility」(アレのパラドックス、Allais 1953, Econometrica, 21: 503-546)
- 宝くじ公式サイト「収益金の使いみち」(令和6年度の売上の内訳)