HOME / ゼロから学ぶ行動経済学 / 講座 / 第4章 プロスペクト理論と損失回避 / フレーミング効果
第4章 プロスペクト理論と損失回避 ・ レッスン4-5フレーミング効果とは?同じ中身でも言い方で選択が変わる
約5分 ・ 公開日 2026-10-06
このレッスンの問い
600人のうち「200人が助かる」と「400人が亡くなる」。中身は同じです。あなたの選び方は、言い方で変わると思いますか?
読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。
前のレッスンの復習(1問)
本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。
Q1. 「99%」が「100%」になるように、結果が確実になることを特に重く見る傾向を何と呼びましたか。
答えを見る
正解: 1. 確実性効果
確実になる最後の一歩を、他の同じ幅の変化より重く感じる傾向です。損失回避は失う痛みの大きさ、アンカリングは最初の数字に引きずられることでした。
01同じ中身でも、言い方で選択が逆転する
得の言い方をされると確実な案を、損の言い方をされると賭けの案を選ぶ人が多くなります。
600人が亡くなると予想される病気に、2つの対策から1つを選ぶ問題があります。トベルスキーとカーネマンが1981年に発表した「アジアの病気問題」です。結果は下の表のとおりです。
「200人が助かる」と言われたグループでは、72%が確実な対策Aを選びました。一方、「400人が亡くなる」と言われた別のグループでは、78%が賭けの対策Dを選びました。
AとC、BとDは、言い方が違うだけで中身は同じです。このように、同じ内容でも見せ方の枠組みで選択が変わることを、フレーミング効果と呼びます。
「助かる」のように得として示す言い方を利得フレーム、「亡くなる」のように損として示す言い方を損失フレームと呼びます。
02医師にも、大規模な再現実験にも表れる
フレーミング効果は医師などの専門家にも表れ、6000人を超える再現実験でも確かめられています。
原典の論文は、同じ逆転を大学の教員や医師のグループでも見たと報告しています。マクニールらは1982年、肺がんになったと想像してもらい、手術か放射線治療かを選ぶ実験でこれを調べました。対象は別の病気で通院中の患者238人、大学院生491人、医師424人です。
治療の結果を「生きている確率」で示すと、「亡くなる確率」で示したときより手術がずっと選ばれやすくなりました。この傾向は、医師を含む3つのグループすべてに見られました。
2014年の大規模な再現研究(Many Labs)では、約6300人の回答で同じ向きの効果が確かめられました。ただし効果の大きさは、原典の約半分でした。
03大事な選択では、逆の言い方に置き換える
大事な選択では、示された言い方を逆の言い方に置き換えて、もう一度考えてみましょう。
言い方の影響を完全に消す方法は、まだはっきりしていません。それでも逆の言い方に直せば、2つの案が同じ中身かどうかを自分で確かめられます。
たとえば地域の防災計画で、ある堤防工事が「住民の9割を守れる」と説明されたとします。「1割の住民は守れない」と言い直すと、印象はかなり変わるはずです。両方を並べたうえで、費用や他の案と比べましょう。
原典の著者たちは、難しい決定では「今どうしたいか」より「そのとき自分はどう感じるか」を問うほうが役に立つと述べています。言い換えとあわせて使ってみてください。
| 言い方 | 対策 | 中身 | 選んだ人 |
|---|---|---|---|
| 得の言い方(152人) | A | 確実に200人が助かる | 72% |
| 得の言い方(152人) | B | 3分の1の確率で600人全員が助かり、3分の2の確率で誰も助からない | 28% |
| 損の言い方(155人) | C | 確実に400人が亡くなる | 22% |
| 損の言い方(155人) | D | 3分の1の確率で誰も亡くならず、3分の2の確率で600人全員が亡くなる | 78% |
あなたの場合は?
最近、「〇%の人が満足」「〇%オフ」のような言い方に引かれて決めたことはありますか?逆の言い方にすると、どう聞こえるでしょうか。
答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。
覚えるのはこの3つ
- 同じ内容でも、得の言い方か損の言い方かで選択が変わる(フレーミング効果。アジアの病気問題では多数派が逆転した)
- 医師にも表れ、「生きている確率」で示すと手術が選ばれやすい。大規模な再現研究でも確かめられたが、効果は原典の約半分
- 大事な選択では、逆の言い方に置き換えて考え直す
TERMSこのレッスンの用語
同じ内容でも、得として言うか損として言うかなど、見せ方の枠組みによって選択が変わる現象。
結果を「助かる」「得る」など得として示す言い方と、「亡くなる」「失う」など損として示す言い方。
600人の命に関わる2つの対策を、得の言い方と損の言い方で示し、選択が逆転することを示した実験(Tversky & Kahneman 1981)。
LESSON 4-5 の確認
確認問題(全3問)
本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。
Q1. アジアの病気問題で、「400人が亡くなる」という言い方をされたグループでは、多くの人がどちらを選びましたか。
答えを見る
正解: 2. 3分の1の確率で誰も亡くならない、賭けの対策
ここがポイントです。損の言い方をされると、78%が賭けの対策Dを選びました。得の言い方では、逆に72%が確実な対策Aを選んでいます。
Q2. マクニールらの1982年の研究でわかったことはどれですか。
答えを見る
正解: 2. 「生きている確率」で示すと、手術が選ばれやすくなった
生存の言い方のほうが手術が選ばれやすく、この傾向は医師を含む3つのグループすべてに見られました。惜しかった人は、向きを表で確かめておきましょう。
Q3. 市役所から「この節電で、家の電気代が年に1万円減ります」と案内が来ました。このレッスンの考え方で、まずすべきことはどれですか。
答えを見る
正解: 1. 「節電しないと、年に1万円多く払い続ける」と言い直し、中身を確かめてから考える
逆の言い方に置き換えると、言い方の印象と中身を分けて考えやすくなります。専門家も一般の人も、言い方の影響を受けることがわかっています。
出典(3件)
- Tversky, A., & Kahneman, D. (1981). The Framing of Decisions and the Psychology of Choice. Science, 211(4481), 453-458.
- McNeil, B. J., Pauker, S. G., Sox, H. C., & Tversky, A. (1982). On the elicitation of preferences for alternative therapies. New England Journal of Medicine, 306(21), 1259-1262.
- Klein, R. A., et al. (2014). Investigating variation in replicability: A "Many Labs" replication project. Social Psychology, 45(3), 142-152.