HOME / ゼロから学ぶ行動経済学 / 講座 / 第13章 実験の方法と再現性・批判 / ランダム化比較試験
第13章 実験の方法と再現性・批判 ・ レッスン13-2ランダム化比較試験とは?効果を公平に比べる方法
約5分 ・ 公開日 2026-10-06 ・ 更新日 2026-10-07
このレッスンの問い
節電アドバイスを「希望した家庭」と「希望しなかった家庭」の電気代を比べれば、アドバイスの効果が分かるでしょうか?分かる・分からない、どちらか予想してから読んでみましょう。
読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。
前のレッスンの復習(1問)
本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。
Q1. 実験経済学の実験で、参加者の成績に応じて実際にお金を払うのはなぜですか。
答えを見る
正解: 1. 本気の選択を引き出すため
ここがポイントです。お金がかかっていないと、適当に選んでしまうかもしれません。実際にお金を払うことで、本気の選択を引き出しています。
01くじで組を分けて、結果を比べる
ランダム化比較試験(RCT)とは、対象者をくじ引きのように2つ以上の組に分け、施策を受けた組と受けない組の結果を比べる方法です。
冒頭の問いの答えは「分からない」です。アドバイスを希望する家庭は、もともと節電に関心が高いかもしれません。電気代の差が、アドバイスのおかげなのか、関心の高さのせいなのか区別できないのです。
このように、比べる組の間にもともとある違いが結果に混ざることを、選択バイアスと呼びます。希望者だけ、選ばれた人だけを集めると、この偏りが入り込みます。
そこで、どの家庭がアドバイスを受けるかをくじで決めます。施策を受ける組を介入群(処置群)、受けない組を対照群と呼びます。この方法をランダム化比較試験、英語の頭文字でRCTと呼びます。
02くじで分けると、ほかの違いが打ち消される
くじで分けると、関心や家計などの違いが両方の組に平均して散らばるので、残った差を施策の効果と考えられます。
ノーベル賞の解説は、学校の教科書の例を挙げています。教科書の多い学校と少ない学校を比べても、豊かな家庭が多い学校ほど本も多く、成績もよいかもしれません。
くじで学校を分ければ、豊かさなどの特徴は始める時点で平均すると同じになります。J-PALの解説によると、組に入る数が多いほど、組どうしはより似てきます。
ただし、どんな問いにも使えるわけではありません。国全体の金融政策のように、比べる相手を作れない施策はくじで分けられません。
03貧困対策の現場でRCTが評価された
2019年のノーベル経済学賞は、貧困対策の現場でRCTを使ったバナジー、デュフロ、クレマーの3人に贈られました。
クレマーらは1990年代半ば、ケニアの農村の学校で実験しました。教科書や無料の給食を増やしても、学力への効果は小さなものでした。
インドの村では、予防接種を全部受けた子どもの割合を、くじで分けた組で比べました。その結果が下の表です。担当者が常にいる移動診療所に、豆1キロの贈り物を加えると、割合は大きく上がりました。
インドの学校で、勉強が遅れた子どもを補習で支える取り組みも、実験で効果が確かめられました。こうした支援は、500万人以上の子どもに広がったと紹介されています。
| 組 | 村で行ったこと | 予防接種を全部受けた子どもの割合 |
|---|---|---|
| 対照群 | いつもどおり(何も変えない) | 6% |
| 介入群1 | 担当者が常にいる移動診療所を開く | 18% |
| 介入群2 | 移動診療所+接種ごとに豆1キロ(約1ドル相当)を贈る | 39% |
あなたの場合は?
あなたの職場や地域で、「参加した人は成果が上がった」と言われている取り組みはありますか?もともと意欲の高い人が参加していただけ、という可能性はないでしょうか。
答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。
覚えるのはこの3つ
- ランダム化比較試験(RCT)とは、対象者をくじ引きのように介入群と対照群に分け、結果を比べて施策の効果を確かめる方法
- 希望者どうしを比べると、もともとの違い(選択バイアス)が混ざる。くじで分けるとほかの違いが平均して打ち消される
- 2019年のノーベル経済学賞は、貧困対策の現場でRCTを使ったバナジー、デュフロ、クレマーに贈られた
TERMSこのレッスンの用語
比べる組の間にもともとある違いが結果に混ざり、施策の効果を正しく測れなくなる偏りのことです。
実験や評価で、効果を確かめたい施策を受ける組のことです。
実験や評価で、施策を受けずに比べる基準になる組のことです。
LESSON 13-2 の確認
確認問題(全3問)
本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。
Q1. ランダム化比較試験で、どの人が施策を受けるかはどうやって決めますか。
答えを見る
正解: 1. くじ引きのように無作為に決める
正解は、くじ引きのように無作為に決める方法です。希望者や研究者が選んだ人だと、もともとの違いが結果に混ざってしまいます。
Q2. ある会社で、研修を希望して受けた社員は、受けなかった社員より成績がよくなりました。この比べ方の弱点はどれですか。
答えを見る
正解: 2. もともと意欲の高い人が希望しただけかもしれないこと
ここがポイントです。希望した人と希望しなかった人には、もともと意欲の差があるかもしれません。これが選択バイアスです。研修の効果を知るには、受ける人をくじで決めて比べる方法があります。
Q3. インドの予防接種の実験で、移動診療所に豆の贈り物を加えた村では、予防接種を全部受けた子どもの割合は何%でしたか。
答えを見る
正解: 3. 39%
正解は39%です。6%は何も変えなかった対照群、18%は移動診療所だけの組の割合でした。惜しかった人も、3つの組を比べた表を見直してみましょう。
出典(4件)
- NobelPrize.org「Press release: The Prize in Economic Sciences 2019」(受賞者3人と受賞理由、500万人以上の子どもへの補習)
- NobelPrize.org「Popular information: Research to help the world's poor」(くじで学校を分ける理由、ケニアの教科書と給食、予防接種6%・18%・39%)
- The Committee for the Prize in Economic Sciences「Scientific Background: Understanding Development and Poverty Alleviation」(2019年。選択バイアスと無作為の割り当て、豆1キロ約1ドル相当)
- J-PAL(MIT)Gibson & Sautmann「Introduction to randomized evaluations」(介入群と比較群、数が多いほど組が似る、無作為に分けられない施策)