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第3章 ヒューリスティクスとバイアス ・ レッスン3-2代表性ヒューリスティックとは?「らしさ」で確率を見誤る
約5分 ・ 公開日 2026-10-06
このレッスンの問い
物静かで、几帳面で、本が好きな人。この人は図書館の司書と農家、どちらの可能性が高いと思いますか?読む前に予想してみましょう。
読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。
前のレッスンの復習(1問)
本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。
Q1. ヒューリスティクス(判断の近道)について、前のレッスンの内容に合うものはどれですか。
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正解: 1. たいてい役に立つが、外れやすい場面では予測できるずれを生む
ここがポイントです。近道そのものが悪いのではなく、外れやすい場面を知っておくことが大事でした。
01「らしさ」で確率を決めてしまう
人は「いかにもそれらしいか」で、起きやすさや確率を判断しがちです。
冒頭の問いで、司書と答えた人は多いでしょう。説明が、司書について思い浮かべる典型的な姿によく似ているからです。
このように、典型的な姿にどれだけ似ているかで確率を判断する近道を、代表性ヒューリスティックと呼びます。似ているかどうかはすぐに分かるので、多くの場面で役に立ちます。
ただし、似ていることと、起きやすいことは別物です。トベルスキーとカーネマンは1974年の論文で、この近道が決まった向きのずれを生むことを示しました。
02リンダ問題。条件を足すと「ありそう」に見える
条件を足した話のほうが確率が高いと感じてしまう誤りを、連言錯誤と呼びます。
1983年の研究で、リンダという女性が紹介されました。31歳で独身、はっきり物を言う聡明な人です。学生時代は哲学を学び、差別や社会正義の問題に強い関心を持っていました。
カナダの大学生142人に、2つの文のどちらがありそうかを尋ねました。「リンダは銀行員である」と「リンダは銀行員で、女性運動に参加している」です。85%が後者を選びました。
惜しいのですが、後者に当てはまる人は全員、前者にも含まれます。条件を足すほど確率は下がるのに、話がそれらしくなるほど高く見えてしまう。この誤りを連言錯誤と呼びます。
職場の計画でも同じことが起きます。「新商品が話題になり、取引先も増え、人手も足りる」と条件を重ねた筋書きは説得力が増しますが、全部そろう確率は下がっています。
03もともとの割合(基準率)を忘れやすい
「らしさ」に目が向くと、全体の中でどれくらい多いかという、もともとの割合を見落としやすくなります。
1973年の実験では、技術者と弁護士あわせて100人から選んだという人物紹介を読み、技術者である確率を答えてもらいました。ある組には「技術者70人・弁護士30人」、別の組には逆の割合を伝えました。
割合が逆なら、答えも大きく変わるはずです。ところが2つの組の答えは、ほとんど同じでした。人物紹介がどちらの職業らしいかだけで判断していたのです。
このもともとの割合を基準率と呼び、それを軽く見ることを基準率の無視といいます。「この人は営業向きっぽい」と感じたときも、まず全体の割合や実績を確かめると外れにくくなります。
| 問題 | 「らしさ」で考えると | 割合で考えると |
|---|---|---|
| リンダは「銀行員」か「銀行員で女性運動に参加」か | 後者のほうがリンダらしいので、ありそうに見える | 後者は前者に含まれるので、前者の確率のほうが必ず高いか等しい |
| 技術者70人・弁護士30人の組と、その逆の組 | 人物紹介のらしさだけで決め、どちらの組でもほぼ同じ答えになる | 技術者が多い組のほうが、技術者である確率は高くなるはず |
| 物静かで几帳面な人は司書か農家か | 司書のイメージに似ているので、司書と答える | 農家のほうが人数がずっと多いことも考えに入れる |
あなたの場合は?
最近、人や店や計画を「いかにもそれらしい」という印象だけで判断したことはありますか?そのとき、全体の割合を確かめたでしょうか。
答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。
覚えるのはこの3つ
- 代表性ヒューリスティックとは、「いかにもそれらしいか」で確率を判断する近道
- 条件を足した話ほどありそうに見えるが、確率は下がる(リンダ問題、連言錯誤)
- 「らしさ」に引っぱられると、もともとの割合(基準率)を忘れやすい
TERMSこのレッスンの用語
典型的な姿にどれだけ似ているか(それらしさ)で、確率や起きやすさを判断する近道。
「AかつB」という条件を足した話のほうが、「A」だけの話より確率が高いと判断してしまう誤り。
全体の中でどれくらい多いかというもともとの割合(基準率)を、判断のときに軽く見てしまうこと。
LESSON 3-2 の確認
確認問題(全3問)
本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。
Q1. リンダ問題の2つの文のうち、確率が高い(または等しい)と言えるのはどれですか。
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正解: 1. 「リンダは銀行員である」
「銀行員で女性運動に参加している人」は全員「銀行員」に含まれます。説明がどうであっても、条件を足したほうの確率が上回ることはありません。
Q2. 技術者と弁護士の人物紹介を使った1973年の実験で分かったことはどれですか。
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正解: 1. 人数の割合を逆にして伝えても、答えはほとんど変わらなかった
70人と30人を入れ替えても、答えはほぼ同じでした。人物紹介の「らしさ」で判断し、もともとの割合を軽く見ていたことが分かります。
Q3. 友人が「この新しいカフェはおしゃれで、いかにも人気店らしいから長く続くよ」と言いました。判断の前に確かめるとよいことはどれですか。
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正解: 1. 同じような新しい店が、全体としてどれくらい続いているか
ここがポイントです。「らしさ」ではなく、全体の割合(基準率)を確かめると外れにくくなります。自信の強さは正しさの証拠になりません。
出典(3件)
- Tversky, A., & Kahneman, D. (1974). Judgment under Uncertainty: Heuristics and Biases. Science, 185(4157), 1124-1131.
- Tversky, A., & Kahneman, D. (1983). Extensional versus intuitive reasoning: The conjunction fallacy in probability judgment. Psychological Review, 90(4), 293-315.
- Kahneman, D., & Tversky, A. (1973). On the psychology of prediction. Psychological Review, 80(4), 237-251.