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第3章 ヒューリスティクスとバイアス ・ レッスン3-5少数の法則とは?少ないデータを信じすぎる心のくせ
約5分 ・ 公開日 2026-10-06
このレッスンの問い
1日に45人生まれる大きな病院と、15人生まれる小さな病院。男の子が6割を超える日が多いのはどちらでしょう?先に予想してから読んでみましょう。
読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。
前のレッスンの復習(1問)
本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。
Q1. 買い物の前に、関係のない大きな数字を見せられました。アンカリングの研究から考えると、その後の値段の見積もりはどうなりやすいですか。
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正解: 2. 最初に見た数字に引きずられ、見積もりがその方向に寄りやすい
ここがポイントです。ルーレットで出た数のように関係のない数字でも、その後の見積もりの基準になってしまいます。
01少ないデータにも「全体らしさ」を期待してしまう
少数の法則とは、少ないデータでも全体と同じ傾向が出ると思い込む心のくせです。
たくさんのデータを集めれば、結果は全体の姿に近づきます。これは統計学で確かめられた性質で、大数の法則と呼ばれます。
ところが私たちは、数件のデータでも同じように全体を映すと考えがちです。トベルスキーとカーネマンは1971年、この思い込みを、大数の法則をもじって少数の法則と名づけました。
2人は心理学者84人に、20人の実験で出た結果を10人でもう一度確かめたら、再び確かな結果が出る確率を尋ねました。答えの中央値は約85%でしたが、妥当な見積もりは約48%です。統計に詳しい専門家でも、少ないデータを信じすぎていたのです。
02小さな集団ほど、結果は大きくぶれる
人数が少ない集団ほど、たまたま偏った結果が出やすくなります。
冒頭の問題は、1974年の論文に出てくるものです。大きな病院では1日に約45人、小さな病院では約15人が生まれ、男の子が6割を超えた日を1年間数えます。
大学生95人のうち53人が「ほぼ同じ」と答え、大きい病院と小さい病院を選んだ人は21人ずつでした。惜しいのですが、正解は小さな病院です。人数が少ないほど、半々からずれた日が起きやすいからです。
コインを4回投げて3回表が出ることはよくあります。でも400回投げて300回表が出ることはまずありません。下の表で、病院の場合の差を確かめてみましょう。
03地域や学校のランキングにもひそむ落とし穴
小さな集団は、ランキングの上位と下位の両方に集まりやすいので、数の少なさを先に確かめることが大切です。
アメリカの郡ごとの腎臓がんの率を見ると、率が最も低い郡も最も高い郡も、人口の少ない農村部に多くありました。田舎の暮らしが体によいとも悪いとも言えそうですが、実際は人口が少なくて率がぶれやすいだけでした。
アメリカの学校でも同じことが起きました。成績上位に小さな学校が多いことから、小さな学校づくりなどの教育事業に巨額の資金が投じられました。ところがウェイナーらがペンシルベニア州の学校を調べると、成績下位にも小さな学校が多く入っていました。
身近な例では、口コミが3件だけの店の満点評価も同じです。評価の高さより先に、何件のデータかを確かめる習慣をつけましょう。
| 大きな病院 | 小さな病院 | |
|---|---|---|
| 1日に生まれる人数 | 約45人 | 約15人 |
| 6割を超える条件 | 28人以上が男の子 | 10人以上が男の子 |
| そうなる確率(1日あたり) | 約7% | 約15% |
| 1年で数えると | 約25日 | 約55日 |
あなたの場合は?
最近、口コミ数件や、1〜2回試しただけの結果で「これは良い」「これはだめ」と決めたことはありますか?そのとき、データは何件ありましたか?
答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。
覚えるのはこの3つ
- 少数の法則とは、少ないデータでも全体と同じ傾向が出ると思い込む心のくせ(Tversky & Kahneman 1971)
- 小さな集団ほど結果は大きくぶれる。病院の問題では、6割を超える日が多いのは小さな病院
- ランキングの上位や下位、口コミ数件の評価を見たら、まず何件のデータかを確かめる
TERMSこのレッスンの用語
少ないデータでも全体と同じ傾向が出ると思い込む心のくせ。大数の法則をもじった呼び名。
データの数を増やすほど、結果が全体の本当の割合に近づいていくという統計学の性質。
調べたデータや人の数。小さいほど、結果がたまたま偏りやすい。
LESSON 3-5 の確認
確認問題(全3問)
本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。
Q1. 少数の法則の説明として、正しいものはどれですか。
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正解: 1. 少ないデータでも全体と同じ傾向が出ると思い込む心のくせ
ここがポイントです。1971年の研究では、統計に詳しい心理学者たちにもこの思い込みが見られました。2つめは大数の法則と逆の内容で、誤りです。
Q2. 1日に約45人生まれる病院と約15人生まれる病院。男の子が6割を超える日が1年間で多いのはどちらですか。
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正解: 2. 小さな病院
「ほぼ同じ」を選んだ人は惜しいです。人数が少ないほど半々からずれやすいので、小さな病院のほうがそうした日が多くなります。
Q3. 市町村別に、ある病気の発生率のランキングを見ています。最下位にも最上位にも人口の少ない町が並んでいました。まず考えるべきことはどれですか。
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正解: 2. 人口が少ないため、率がたまたま大きくぶれている可能性を考える
小さな集団は、ランキングの上と下の両方に集まりやすくなります。原因を探す前に、数の少なさによるぶれを疑いましょう。
出典(3件)
- Tversky, A., & Kahneman, D. (1971). Belief in the law of small numbers. Psychological Bulletin, 76(2), 105–110.
- Tversky, A., & Kahneman, D. (1974). Judgment under uncertainty: Heuristics and biases. Science, 185(4157), 1124–1131.
- Wainer, H. (2007). The most dangerous equation. American Scientist, 95 (May–June), 249–256.(ワシントン大学の授業資料に掲載された論文PDF)