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第9章 社会的ジレンマ ・ レッスン9-2

囚人のジレンマ。協力すれば得なのに裏切ってしまう

約5分 ・ 公開日 2026-10-06

このレッスンの問い

相手が協力してくれるなら、あなたも協力しますか?それとも、そのすきに自分だけ得をしますか?読む前に、自分ならどうするか予想してみましょう。

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン9-1から

Q1. 社会的ジレンマの説明として正しいものはどれですか。

答えを見る

正解: 1. 一人ひとりは協力しないほうが得だが、全員がそうすると全員が協力したときより全員が悪くなる
ここがポイントです。一人で見れば協力しないほうが得、でも全員がそうすると全員が損をする。このずれが社会的ジレンマでした。

01相手がどちらでも、裏切るほうが得になる

囚人のジレンマでは、相手が協力しても裏切っても、自分は裏切ったほうが得になります。

2人がそれぞれ「協力」か「裏切り」を選び、結果が2人の選択の組み合わせで決まる状況があります。元の話では、捕まった2人の容疑者が、別々の部屋で黙るか仲間のことを話すかを選びます。これを囚人のジレンマと呼びます。

下の表は、研究でよく使われる点数の例です。相手が協力するなら、自分は協力で3点、裏切れば5点です。相手が裏切るなら、協力で0点、裏切れば1点です。

どちらの場合も、裏切るほうが点が高いですね。だから自分の得だけを考えると、相手が何を選んでも裏切ることになります。

022人とも裏切ると、2人とも損をする

2人とも裏切ると1点ずつになり、2人とも協力したときの3点ずつより悪い結果になります。

一人ひとりが得な選択をした結果、2人そろって損をする。ここが「ジレンマ(板ばさみ)」と呼ばれる理由です。

隣り合う2軒の店の値下げ競争で考えてみましょう。相手が値段を保つなら、自分だけ下げれば客を集められます。相手が下げるなら、自分も下げないと客を取られます。

こうして2軒とも値下げし、どちらも利益が減ってしまいます。両方が値段を保っていれば、2軒とも今より多く稼げたはずです。

03何度も付き合う相手とは、協力が生まれやすい

同じ相手と何度も繰り返す関係では、相手の出方にお返しをするやり方で協力が続きやすくなります。

政治学者のロバート・アクセルロッドは、囚人のジレンマを同じ相手と何度も繰り返すとき、どんな作戦が強いかを競う大会を開きました。専門家から作戦をコンピュータのプログラムとして集め、総当たりで対戦させました。

勝ったのは、出された中で最も単純な作戦でした。最初は協力し、その後は相手が前の回にしたことをそのまま返します。これをしっぺ返しと呼び、60を超える作戦が集まった2回目の大会でも勝ちました。

ただし、大会の進め方を変えると別の作戦が上回るという研究もあり、しっぺ返しが最強かどうかはまだはっきりしていません。大事なのは、また会う相手とは、お返しが協力を支えうるという点です。

相手が協力相手が裏切る
自分が協力自分3点・相手3点自分0点・相手5点
自分が裏切る自分5点・相手0点自分1点・相手1点
囚人のジレンマの点数の例(アクセルロッドの解説の数値をもとに作成)。相手がどちらを選んでも、自分は「裏切る」の行のほうが点が高い。でも2人とも裏切ると1点ずつで、2人とも協力した3点ずつより低い

あなたの場合は?

家族や同僚、近所の人との間で、お互いに譲れば楽なのに、先に譲ると損な気がして張り合ってしまったことはありますか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 囚人のジレンマでは、相手がどちらを選んでも自分は裏切るほうが得
  2. でも2人とも裏切ると、2人とも協力したときより悪い結果になる
  3. 何度も繰り返す関係では、しっぺ返しのように協力が生まれやすい(アクセルロッドの大会)

TERMSこのレッスンの用語

囚人のジレンマPrisoner's dilemma

2人が協力か裏切りを選ぶとき、相手がどちらを選んでも裏切るほうが得なのに、2人とも裏切ると2人とも協力したより悪くなる状況。

繰り返し囚人のジレンマIterated prisoner's dilemma

同じ相手と囚人のジレンマを何度も続けて行う形。前の回の相手の出方に応じて、お返しや仕返しができる。

しっぺ返しTit for tat

最初は協力し、その後は相手が前の回にしたことをそのまま返す作戦。アクセルロッドの大会で勝った。

LESSON 9-2 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. 表の点数で、相手が裏切ると分かっているとき、自分の点が高くなるのはどちらですか。

答えを見る

正解: 2. 裏切る(1点)
相手が裏切るなら、協力で0点、裏切りで1点です。相手が協力する場合も裏切りが得なので、どちらでも裏切るほうが点は高くなります。

Q2. アクセルロッドの大会で勝った「しっぺ返し」の作戦はどれですか。

答えを見る

正解: 2. 最初は協力し、その後は相手が前の回にしたことを返す
しっぺ返しは、最初に協力し、あとは相手の前の回の手をまねる単純な作戦です。裏切られても、相手が協力に戻れば自分も協力に戻ります。

日常の場面で考える

Q3. 同じ地区の2軒の店が値下げ競争をやめられないとき、囚人のジレンマから見て協力が生まれやすいのはどんな条件ですか。

答えを見る

正解: 1. 2軒が長く同じ場所で商売を続け、相手の値段を毎週見て対応できる
ここがポイントです。何度も顔を合わせ、相手の出方にお返しできる関係ほど協力は続きやすくなります。閉店間近だと次がないので、裏切りが得になりやすいのです。

レッスン9-2はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第9章 社会的ジレンマ のレッスン一覧
  1. 9-1社会的ジレンマ
  2. 9-2囚人のジレンマ
  3. 9-3共有地の悲劇
  4. 9-4公共財ゲーム
  5. 9-5オストロムの設計原則

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出典(4件)
  1. Kuhn, S. "Prisoner's Dilemma" Stanford Encyclopedia of Philosophy(ジレンマの定義、Flood と Dresher による考案、14.1節 Axelrod and Tit for Tat、しっぺ返しへの近年の慎重な評価)
  2. Axelrod, R. "The Evolution of Cooperation"(Axelrod 1984年の著書からの抜粋。点数の例 5・3・1・0、大会としっぺ返しの説明)
  3. Axelrod, R. & Dion, D. (1988) "The Further Evolution of Cooperation" Science 242(2回目の大会の応募62件、しっぺ返しが連勝)
  4. Axelrod, R. Citation Classic commentary on Axelrod & Hamilton (1981) "The Evolution of Cooperation" Science 211: 1390-1396