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第9章 社会的ジレンマ ・ レッスン9-5共有地は守れる。オストロムの8つの設計原則
約5分 ・ 公開日 2026-10-06
このレッスンの問い
村の人みんなで使う山の森。国が管理しないと、すぐに切り尽くされてしまうと思いますか?読む前に予想してみましょう。
読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。
前のレッスンの復習(1問)
本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。
Q1. 公共財ゲームを同じメンバーで何度も繰り返すと、みんなが出すお金(拠出)はふつうどうなりましたか。
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正解: 1. 回を重ねるごとに下がっていく
ここがポイントです。最初は中くらい出しますが、出さない人がいると知ると、条件付き協力者も出す額を減らしていきます。
01自分たちで守ってきた共有地がある
世界には、使う人たち自身がルールを作り、何百年も資源を守ってきた共有地があります。
レッスン3で見たように、ハーディンは共有地を守るには私有化か政府の規制が必要だと考えました。これに事例で答えたのが、政治学者のエリノア・オストロムです。
オストロムは、牧草地・森・漁場・地下水など、使う人たちが管理する資源の事例を世界中から集めて比べました。結果は、理論の予想よりうまくいっていることが多いというものでした。この研究で、2009年にノーベル経済学賞を受けています。
日本の例もあります。研究者マッキーンの推計では、江戸時代には約1200万ヘクタールの森や草地を、村々が共同で管理していました。こうした村の共有の山や野原を入会地と呼びます。
村は山に入れる日を決め、使う権利を家ごとに与えました。多くの村では見回り役が2人1組で馬に乗って巡回し、違反の罰金は軽いものから重いものまで段階がありました。
02長く続いた共有地の共通点は8つ
オストロムは、長く続いた共有地に共通する特徴を、8つの設計原則にまとめました。
細かいルールは、土地ごとにばらばらでした。そこでオストロムは一段上の共通点を探し、それを設計原則と呼びました。下の表で、8つを身近な言葉で確かめましょう。
2010年には、この原則を検討した91の研究をまとめた論文が出ました。どの原則も、原則を支持する事例が支持しない事例の2倍以上あり、よく支持されていると結論しています。
ただし、8つが全部そろわないと必ず失敗する、とまでは言えません。オストロム自身も1990年の時点で、必要条件と言い切るにはさらに研究が要ると書いています。
03話し合いと、自分たちで決めることが協力を支える
ルールを使う人たち自身が話し合って決め、自分たちで見回ることが、協力を長続きさせます。
外から押しつけられたルールは納得されにくく、破られやすいとされます。見回りも、外の人より内側の人が行うほうがうまくいきます。
実験でも、名前のわからない相手と話せないままだと、共有の資源を取りすぎました。ところが話し合いを許すだけで取りすぎが減り、全員の取り分が増えました。
マンションの駐輪場で考えてみましょう。登録シールで使う人を決め、住民の話し合いでルールを作り、放置自転車には最初は注意の札、続けば撤去と段階をつける。これだけで3つの原則が入っています。
ただし、自主管理がいつも最善とは限りません。私有化や公的な管理のほうがうまくいく場合もあります。
| 設計原則 | 身近な言い方 |
|---|---|
| 1. はっきりした境界 | 誰が使えるか、どこまでが共有地かが決まっている |
| 2. 土地の事情に合ったルール | 取る量や時期と、手入れの負担が釣り合い、その土地に合っている |
| 3. みんなで決める仕組み | ルールの影響を受ける人の多くが、ルールづくりに加われる |
| 4. 見回り | 使う人自身か、使う人に責任を負う人が、資源と使い方を見回る |
| 5. 段階的な制裁 | 違反への罰は、違反の重さや事情に応じて、軽いものから重いものへ段階がある |
| 6. もめごとを解決する場 | 近くで、安く、すぐに話し合える場がある |
| 7. 自分たちで決める権利 | 地元で自分たちのルールを作る権利を、政府など外の権威が否定しない |
| 8. 入れ子の組織 | 大きな資源では、小さな集まりが何層にも重なって管理する |
あなたの場合は?
あなたの職場や地域で「みんなで使うもの」(共有の冷蔵庫、ごみ置き場、公園など)を1つ思い浮かべてください。8つの原則のうち、欠けているのはどれでしょうか?
答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。
覚えるのはこの3つ
- 使う人たち自身のルールで、長く守られてきた共有地が世界にある(日本の入会地もその一つ)
- 長続きの共通点は8つの設計原則。境界・土地に合ったルール・みんなで決める・見回り・段階的な制裁など
- 話し合いと、ルールを自分たちで決めて見回れることが、協力を支える
TERMSこのレッスンの用語
オストロムが、長く続いた共有地の管理に共通して見られる特徴を8つにまとめたもの。
村の人たちが共同で使い、管理してきた山林や草地。日本では江戸時代に広く見られた。
ルール違反への罰を、最初は軽くし、違反の重さやくり返しに応じて重くしていくやり方。
LESSON 9-5 の確認
確認問題(全3問)
本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。
Q1. オストロムが世界の共有資源の事例を比べてわかったことは、どれですか。
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正解: 1. 使う人たちが管理する共有資源は、理論の予想よりうまくいっていることが多い
オストロムは、使う人たち自身がルールを作り、守らせる仕組みを育ててきた例が多いことを示しました。ただ、私有化や公的な管理が向く場合もあると考えられています。
Q2. 8つの設計原則の「段階的な制裁」に当たるのは、どれですか。
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正解: 3. 違反への罰は、軽いものから始め、違反の重さに応じて重くしていく
惜しい人は、厳しさの順番に注目しましょう。日本の入会地でも、罰金は軽いものから重いものまで段階がありました。
Q3. 町内会が、公園の花壇の水やり当番を決めます。設計原則に最も沿ったやり方はどれですか。
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正解: 2. 花壇を使う住民が集まって話し合い、当番と、忘れたときの対応を決める
ここがポイントです。影響を受ける人がルールづくりに加わると、納得されて守られやすくなります。話し合いは協力を支える大事な道具です。
出典(5件)
- NobelPrize.org「The Prize in Economic Sciences 2009 - Press release」
- NobelPrize.org「Economic governance: the organization of cooperation」(2009年 経済学賞の一般向け解説)
- Elinor Ostrom「Beyond Markets and States: Polycentric Governance of Complex Economic Systems」ノーベル賞講演(2009年12月8日)
- Elinor Ostrom (1990)『Governing the Commons: The Evolution of Institutions for Collective Action』Cambridge University Press(第3章、日本の平野・長池・山中の村の事例と表3.1)
- Cox, M., Arnold, G., & Villamayor Tomás, S. (2010). A review of design principles for community-based natural resource management. Ecology and Society, 15(4), 38.