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第9章 社会的ジレンマ ・ レッスン9-3

共有地の悲劇とは?みんなの資源はなぜ使い尽くされるのか

約5分 ・ 公開日 2026-10-06

このレッスンの問い

職場の共用の冷蔵庫や休憩室が、いつの間にか散らかってしまうのはなぜでしょう?読む前に理由を1つ予想してみてください。

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン9-2から

Q1. 囚人のジレンマで、2人とも自分の得だけを考えて「裏切る」を選ぶと、どうなりましたか。

答えを見る

正解: 1. 2人とも協力したときより、2人とも悪い結果になる
ここがポイントです。一人ひとりには裏切るほうが得でも、2人そろって裏切ると、そろって協力したときより2人とも損をします。

01誰でも使えて、使うと減る資源で起きる

共有地の悲劇とは、誰でも使えて使うと減る資源が、みんなの合理的な判断の結果、使い尽くされてしまうことです。

アメリカのハーディンは1968年、科学誌サイエンスの論文でこの問題を示しました。題名は「共有地の悲劇」です。

例は、誰でも牛を放せる牧草地です。牛飼いはそれぞれ、自分の牛をできるだけ増やそうとします。牛が少ないうちは問題ありませんが、頭数が草の量を超えると、草地はやせていきます。

ポイントは、誰でも使えることと、使うと減ることの2つです。この2つがそろう資源は、身の回りにも社会にもたくさんあります。

02得は自分のもの、損はみんなで薄く分ける

牛を1頭増やした得は本人がすべて受け取り、草が減る損は全員で分けるので、誰もが増やし続けてしまいます。

牛を1頭増やすと、売ったときの儲けは全部自分のものです。一方、草が減る損は牛飼い全員にかかるので、自分の負担はほんの一部です。下の表で確かめてみましょう。

だから一人ひとりにとっては、増やすほうが合理的です。しかし全員が同じ判断をすると、牧草地そのものがだめになります。ハーディンは「共有地での自由は、すべての人に破滅をもたらす」と書きました。

同じことが海でも起きています。FAOの世界漁業・養殖業白書2026年版によると、2023年時点で評価された魚の資源のうち、持続できる水準にあるのは約62.4%でした。残りの37.6%は、資源量がその水準を下回る獲りすぎ(過剰漁獲)の状態です。

03ハーディンの答えは「私有化か規制」

ハーディンは、良心への呼びかけだけでは防げないので、私有にするか、政府などがルールで使い方を制限するべきだと考えました。

ハーディンは、国立公園の例で選択肢を挙げています。私有地として売る方法と、公有のまま入る権利を割り当てる方法です。汚染には、法律や税で垂れ流しを割高にする方法を挙げました。

彼は、責任感に言葉で訴えるだけでは足りないと考えました。必要なのは、影響を受ける人の多数が合意したうえでの強制だと述べています。

では、私有化か政府の規制か、答えは本当にこの2つだけでしょうか。地元の人たちの自主管理で守られてきた共有地もあります。その話は、このあとのレッスンで扱います。

場面自分が受け取る得自分が負う損結果
自分だけ1頭増やす1(全部自分のもの)0.1(損1を10人で分ける)増やしたほうが得
10人全員が1頭ずつ増やす11(10頭分の損を10人で分ける)得をしないのに草はやせ続ける
全員がさらに増やし続ける草がなくなれば0に近づく草地そのものを失う全員が損をする
牛飼い10人が使う牧草地で、1頭増やしたときの得と損(ハーディン(1968)の考え方をもとにした説明用の数字。牛1頭分の儲けを1とし、1頭増えて草が減る損も1とする)

あなたの場合は?

職場や家庭、地域で「誰でも使えて、使うと減るもの」はありますか?それを使うとき、損を誰が負っているか考えてみましょう。

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 共有地の悲劇は、誰でも使えて、使うと減る資源で起きる
  2. 増やした得は自分がすべて受け取り、資源が減る損はみんなで薄く分けるので、誰もが使いすぎてしまう
  3. ハーディン(1968年)は、私有化か政府などの規制が必要と考えた(自主管理という別の答えはこの章の最後のレッスンへ)

TERMSこのレッスンの用語

共有地の悲劇Tragedy of the commons

誰でも使えて使うと減る資源が、一人ひとりの合理的な判断の積み重ねで使い尽くされてしまうこと。ハーディンが1968年に示した。

過剰漁獲(獲りすぎ)Overfishing

魚の資源を、長く獲り続けられる水準を下回るまで獲ってしまうこと。FAOは、資源量が最大の漁獲を続けられる水準より少ない資源を「獲りすぎ」に分類している。

LESSON 9-3 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. 共有地の悲劇が最も起きやすいのは、どんな資源ですか。

答えを見る

正解: 1. 誰でも使えて、使うと減る資源
誰でも使えることと、使うと減ることの2つがそろうと起きます。持ち主がはっきりしていたり、使っても減らなかったりする資源では起きにくいのです。

Q2. ハーディンが共有地の悲劇を防ぐ方法として考えたものはどれですか。

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正解: 2. 私有にするか、政府などが使い方をルールで制限する
惜しい選択肢もありますが、ハーディンは言葉で責任感に訴えるだけでは足りないと考え、私有化や規制を挙げました。

日常の場面で考える

Q3. 職場の共用のお菓子箱から、一人ひとりが「自分くらい多めに取っても平気」と思い、すぐ空になりました。共有地の悲劇の考え方で説明すると、どれが最も近いですか。

答えを見る

正解: 2. 多めに取った得は自分のもので、減る損はみんなで分けるから
ここがポイントです。取った得は自分だけのもの、減った損は全員で薄く分けるので、一人ひとりは取りすぎてしまいます。

レッスン9-3はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第9章 社会的ジレンマ のレッスン一覧
  1. 9-1社会的ジレンマ
  2. 9-2囚人のジレンマ
  3. 9-3共有地の悲劇
  4. 9-4公共財ゲーム
  5. 9-5オストロムの設計原則

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出典(3件)
  1. Hardin, G. (1968). The Tragedy of the Commons. Science, 162(3859), 1243–1248.
  2. FAO「The State of World Fisheries and Aquaculture 2026」The status of fishery resources
  3. FAO Newsroom「FAO releases the most detailed global assessment of marine fish stocks to date」(2025年6月11日。持続できる水準にない資源を「獲りすぎ」と分類していることの確認)