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第9章 社会的ジレンマ ・ レッスン9-4

公共財ゲームとは?協力はなぜ崩れ、罰で持ち直すのか

約5分 ・ 公開日 2026-10-06

このレッスンの問い

グループ課題で、手を抜く人が1人いたら、あなたの頑張りは変わりますか?読む前に予想してみましょう。

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン9-3から

Q1. 共有地の悲劇で、一人ひとりが資源を使いすぎてしまうのはなぜでしたか。

答えを見る

正解: 1. 使った得は自分のものになり、資源が減る損はみんなで薄く分けるから
ここがポイントです。得は自分に集まり、損は全員に広く分かれます。だから一人ひとりにとっては、使うほうが得に見えてしまうのでした。

01出す額は、最初は中くらい、やがて下がる

公共財ゲームを繰り返すと、最初は持ち分の半分ほどが出されますが、回を追うごとに減っていきます。

4人が20ずつお金を持ち、好きな額を共同の箱に入れる実験があります。箱のお金は増やされて、出さなかった人も含めて4人で等分します。これを公共財ゲームと呼びます。

全員が全額を出せば、全員の手取りが一番多くなります。でも自分だけ出さずに分け前をもらうほうが、一人ひとりには得です。出さずに得だけ受け取る人を、フリーライダー(ただ乗りする人)と呼びます。

1999年の論文が紹介した、罰のない12の実験のまとめでは、最初の回は持ち分の4〜6割ほどが出されました。ところが最後の回には、7割ほどの人がまったく出しませんでした。

02多くの人は「みんなが出すなら出す」

協力が崩れるのは、他の人に合わせて出す額を決める人が多いからです。

フィッシュバッハーらは2001年、「他の人が平均これだけ出したら、自分はいくら出すか」を一人ずつ尋ねました。すると約半数が、他の人が多く出すほど自分も多く出すと答えました。こうした人を条件付き協力者と呼びます。

一方で、約3分の1の人は、他の人がいくら出しても自分は出さないと答えました。協力したい人と、ただ乗りする人が混ざっているわけです。

職場の共用キッチンを思い浮かべてください。片付けない人がいると、他の人も「自分だけやるのは損だ」と手を止めます。こうして少しずつ協力が下がっていくのです。

03罰があると協力は保たれる。ただし社会による

自分が損をしてでも罰を与えられるようにすると、出す額は高いまま保たれやすくなります。

フェールとゲヒターは、出し合いのあとに罰を与えられる段階を加えました。罰する側にも費用がかかり、自分は何も得をしません。それでも多くの人が、出さない人を罰しました。

この自腹を切る罰を、利他的罰と呼びます。罰がない条件では出す額が下がり続けたのに対し、罰がある条件では高い水準が保たれました。

ただし、2008年に世界16か所で同じ実験をすると、たくさん出した人まで罰する「反社会的な罰」が見られました。それが強い場所では、罰で協力が高まる効果が消えました。協力の規範や法の支配が弱い国ほど、こうした罰が多い傾向でした。

あなた他の3人あなたの手取り4人の手取りの合計
20出す全員20出す32128
出さない全員20出す44116
20出す全員出さない892
出さない全員出さない2080
公共財ゲームの手取りの例(4人が20ずつ持ち、箱のお金は1.6倍にして4人で等分。Fehr & Gächterの実験と同じ設定をもとに作成)

あなたの場合は?

町内会の清掃やグループ課題で、「他の人が来るなら自分も行く」と決めたことはありますか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 公共財ゲームを繰り返すと、出す額は最初は中くらい、回を重ねると下がっていく
  2. 多くの人は「他の人が出すなら自分も出す」条件付き協力者。ただ乗りする人がいると協力が崩れる
  3. 自腹を切ってでも罰を与えられると協力は保たれやすい。ただし効果は社会によって異なる

TERMSこのレッスンの用語

公共財ゲームPublic goods game

何人かが手持ちのお金を共同の箱に出し、増えたお金を出さなかった人も含めて等分する実験。協力とただ乗りを調べるのに使われる。

条件付き協力者Conditional cooperator

他の人が多く出すほど自分も多く出す人。公共財ゲームの研究では、約半数がこのタイプだった。

利他的罰Altruistic punishment

自分に費用がかかり、何の得にもならないのに、協力しない人を罰すること。

LESSON 9-4 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. 罰のない公共財ゲームを何回も繰り返すと、出す額は一般にどうなりますか。

答えを見る

正解: 2. 最初は中くらいだが、回を重ねると下がっていく
最初の回は持ち分の4〜6割ほどが出されますが、最後の回には7割ほどの人がまったく出しませんでした。最初から協力しないわけではない点がポイントです。

日常の場面で考える

Q2. 職場の共用スペースで、掃除をさぼる人が出てから、他の人も掃除をしなくなりました。この動きを最もよく説明するのはどれですか。

答えを見る

正解: 1. 多くの人が、他の人に合わせて協力するかを決める条件付き協力者だから
惜しい選択肢もありますが、研究では約半数が条件付き協力者でした。全員がただ乗りする人ではありません。周りが手を抜くのを見て、自分も手を止めてしまうのです。

Q3. 2008年の16か所での実験から分かったことはどれですか。

答えを見る

正解: 2. たくさん出した人まで罰する反社会的な罰が強い場所では、罰の効果が消えた
ここがポイントです。罰がうまく働くかどうかは社会によって違いました。協力の規範や法の支配が弱い国ほど、反社会的な罰が多い傾向でした。

レッスン9-4はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第9章 社会的ジレンマ のレッスン一覧
  1. 9-1社会的ジレンマ
  2. 9-2囚人のジレンマ
  3. 9-3共有地の悲劇
  4. 9-4公共財ゲーム
  5. 9-5オストロムの設計原則

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出典(5件)
  1. Fehr, E. & Gächter, S. (2000) Cooperation and Punishment in Public Goods Experiments. American Economic Review 90(4), 980-994
  2. 同論文の作業論文版(CESifo Working Paper No. 183, 1999)。実験の設定と、罰のない公共財実験12件のまとめ
  3. Fischbacher, U., Gächter, S. & Fehr, E. (2001) Are people conditionally cooperative? Evidence from a public goods experiment. Economics Letters 71(3), 397-404
  4. Fehr, E. & Gächter, S. (2002) Altruistic punishment in humans. Nature 415, 137-140
  5. Herrmann, B., Thöni, C. & Gächter, S. (2008) Antisocial Punishment Across Societies. Science 319(5868), 1362-1367