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第12章 公共政策への応用 ・ レッスン12-4

EBPMとは?効果を確かめてから広げる政策づくり

約5分 ・ 公開日 2026-10-06 ・ 更新日 2026-10-07

このレッスンの問い

論文で「よく効いた」と報告されたナッジを、市全体で行うと、効果はどうなると思いますか?同じくらい・大きくなる・小さくなる、のどれか予想してみましょう。

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン12-3から

Q1. 税の督促状で納付を増やした書き方として、前のレッスンで学んだものはどれですか。

答えを見る

正解: 1. 「多くの人が期限内に納めています」と書き添える
ここがポイントです。周りの多くの人が納めていると伝える書き方で、期限内の納付が増えました。社会規範メッセージを使った例です。

01EBPMは「証拠で決める」政策づくり

EBPM(証拠に基づく政策立案)とは、その場限りの成功談に頼らず、目的をはっきりさせたうえで証拠をもとに政策を決めることです。

政策を決めるとき、「隣の町でうまくいったらしい」という話だけで決めてしまうことがあります。こうした一つの成功談だけでは、本当に効いたのかは分かりません。

そこで、目的をはっきりさせ、効果の証拠をもとに決める考え方が広がりました。これをEBPM(証拠に基づく政策立案)と呼びます。

内閣府も、政策の企画をその場限りのエピソードに頼らず、合理的な根拠に基づくものにすることだと説明しています。内閣府には推進チームがあり、毎年度の取り組み方針を公表しています。

02小さく試して、効いたものを広げる

いきなり全体で始めず、一部で試して効果を測り、効いたものだけを広げるのがEBPMの基本の流れです。

たとえば、ある市がごみの分別ミスを減らしたいとします。新しい案内チラシをいきなり全世帯に配るのではなく、まず一部の地区で配り、配らない地区と分別の様子を比べます。

効果があれば市全体に広げ、なければ別の案を試します。イギリスのナッジ・ユニットは2012年、この流れを「試す・学ぶ・直す」(Test, Learn, Adapt)という題の報告書にまとめました。

公平に比べるための具体的な方法は、第13章で学びます。ここでは「広げる前に確かめる」という順番を覚えておきましょう。

03広げると、効果は小さく見えることがある

アメリカの研究では、行政が実際に行ったナッジの効果は、学術誌の論文で報告された効果の約6分の1でした。

デラヴィーニャとリノスは、アメリカの2つのナッジ・ユニットが行った126件の実験(対象は約2300万人)を、論文で報告されたナッジと比べました。結果は2022年に学術誌に載りました。

論文では、申し込みなどの行動をとる人の割合が平均8.7ポイント上がっていました。一方、行政の実験では平均1.4ポイントでした。

論文の側には、人数の少ない実験が多く、効果がはっきり出た結果ほど発表されやすいのです。この偏りを出版バイアスと呼びます。人数の少なさと合わせて、差の約7割を説明すると推定されています。

比べたこと学術誌の論文のナッジ行政のナッジ・ユニットのナッジ
行動をとる人の割合の上がり方(平均)8.7ポイント1.4ポイント
何もしない場合と比べた増え方約33%増約8%増
1つの案を試した人数(中央値)484人1万6人
分析に入った実験はっきり効いたものほど発表されやすい2つのユニットが行ったすべての実験
論文のナッジと、行政のナッジ・ユニットが行ったナッジの比較(DellaVigna & Linos 2022。人数の中央値はNBERワーキングペーパー版より)

あなたの場合は?

あなたの職場や地域で、「よそで効いたらしい」という理由だけで始まった取り組みはありますか?一部で試してから広げるなら、何を測ればよいでしょうか。

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. EBPM(証拠に基づく政策立案)とは、その場限りの成功談ではなく、効果の証拠をもとに政策を決めること
  2. いきなり全体で始めず、小さく試して効果を測り、効いたものを広げる
  3. 行政が実際に行ったナッジの効果(1.4ポイント)は、論文の報告(8.7ポイント)より小さかった。差の多くは出版バイアスと人数の少なさで説明される

TERMSこのレッスンの用語

出版バイアスPublication bias

はっきりした効果が出た研究ほど発表されやすく、効果が出なかった研究が埋もれるために、発表された研究全体の効果が実際より大きく見える偏り。

スケールアップScaling up

小さな規模で試して効果が確かめられた取り組みを、より大きな地域や人数に広げること。

LESSON 12-4 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. 内閣府の説明にそったEBPMの説明として、正しいものはどれですか。

答えを見る

正解: 1. 政策目的をはっきりさせ、合理的な根拠に基づいて政策を決めること
EBPMは、その場限りのエピソードに頼らず、根拠に基づいて政策を決める考え方です。他の自治体の成功談は、それだけでは証拠として足りません。

Q2. DellaVigna と Linos の研究で分かったことはどれですか。

答えを見る

正解: 2. 行政のナッジの効果は平均1.4ポイントで、論文の8.7ポイントより小さかった
惜しいのは3つめです。行政のナッジにも効果はありました。ただ、論文で報告された効果より小さかったのです。

日常の場面で考える

Q3. あなたの市が、節電を呼びかける新しいお知らせを考えています。EBPMの考え方にそった進め方はどれですか。

答えを見る

正解: 2. まず一部の世帯に送り、送らない世帯と電気の使用量を比べてから広げるか決める
ここがポイントです。小さく試して効果を測り、効いたら広げます。送った枚数は、行動が変わったかどうかの証拠にはなりません。

レッスン12-4はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第12章 公共政策への応用 のレッスン一覧
  1. 12-1ナッジ・ユニット
  2. 12-2日本版ナッジ・ユニット
  3. 12-3政策のナッジ事例
  4. 12-4EBPM

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出典(4件)
  1. 内閣府「EBPM(証拠に基づく政策立案)」
  2. DellaVigna, S., & Linos, E. (2022). RCTs to Scale: Comprehensive Evidence From Two Nudge Units. Econometrica, 90(1), 81-116.
  3. DellaVigna, S., & Linos, E. (2020). RCTs to Scale: Comprehensive Evidence from Two Nudge Units. NBER Working Paper 27594.
  4. Cabinet Office & Behavioural Insights Team (2012). Test, Learn, Adapt: Developing Public Policy with Randomised Controlled Trials.