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第5章 参照点と保有効果 ・ レッスン5-4セールと参照価格。「元値」が判断を変える
約5分 ・ 公開日 2026-10-06
このレッスンの問い
「通常価格10,000円→今だけ5,000円」と「いつでも5,000円」。同じ5,000円の同じ品なら、どちらが欲しくなりそうですか?読む前に予想してみてください。
読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。
前のレッスンの復習(1問)
本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。
Q1. 現状維持バイアスの説明として正しいものはどれですか。
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正解: 1. 今のままを選びやすく、変えることに抵抗を感じる傾向
ここがポイントです。変えると失うものが大きく見えるので、契約やプランを見直さずに続けてしまいがちでした。損失回避とつながる傾向です。
01「元値」が得の感じ方を決める
同じ値段でも、基準にする値段より安ければ得に、高ければ損に感じます。
値段が高いか安いかを判断するときの基準になる値段を、参照価格と呼びます。5-1で学んだ参照点の、値段版です。セールで示される「元値」は、この参照価格になりやすい数字です。
経済学者のセイラーは1985年の論文で、こんな質問をしました。暑い浜辺で、連れが近くの店から好きな銘柄の冷たいビールを買ってきてくれる。いくらまでなら払うか、という質問です。
店が高級リゾートホテルだと聞いた人の答えの中央値は2.65ドル、小さく古びた食料品店だと聞いた人は1.50ドルでした。浜辺で飲むビールは同じなのに、買う場所で「ふつうの値段」の感覚が変わったのです。
セイラーは、物そのものの価値とは別に、参照価格より安く買えたこと自体のうれしさがあると考え、これを取引効用と名づけました。元値を見せられると、この「お得感」まで値段に上乗せされます。
02根拠のない元値は不当表示になりうる
実際には売っていなかった元値を示すと、景品表示法の不当表示に当たるおそれがあります。
販売価格に、それより高い比較用の価格を並べる表示を二重価格表示と呼びます。消費者庁の価格表示ガイドラインは、内容が正しければ、選択や価格競争に役立つ面があるとしています。
一方で、比較用の価格がうそや、あいまいなものだと、安いと誤解させる不当表示に当たるおそれがあります。実際より得だと思わせて、選ぶ判断を誤らせてしまうからです。
過去の値段を元値にする場合の目安が、下の表です。セール開始前の8週間のうち、半分を超える期間その値段で売っていれば、一般的には「最近相当期間の価格」とみてよいとされます。ただし例外があり、最終的には事案ごとに判断されます。
03元値ではなく、今の値段と必要かで決める
買うかどうかは、元値との差ではなく、今の値段を払ってでも必要かで決めるのが確実です。
対策はシンプルです。元値を手で隠して「この値段で、いつでも売っていたら買うか」と自分に聞いてみましょう。3-4のアンカリングで見たとおり、示された数字の影響を完全に消すのは難しいからです。
たとえば、ネット通販で冬物のコートが「通常価格20,000円→8,000円」だったとします。でも、家に着られるコートがあるなら、これは8,000円の出費が増えるだけです。
安さにつられて買った服が着られないままなら、お金だけでなく資源もむだになります。表示が正しくても、元値との差は「必要かどうか」を教えてはくれないのです。
| 元値で売っていた期間の例 | 目安に照らすと |
|---|---|
| セール前8週間のうち5週間。最後に元値で売ったのはセール前日 | 過半を占めるので、一般的には「最近相当期間の価格」とみてよい |
| 8週間のうち最初の2週間だけ。残り6週間はもっと安く売っていた | 過半に届かず、「当店通常価格」などと示すと不当表示のおそれ |
| 8週間のうち最初の5週間。元値で最後に売ったのは3週間前 | 最後の日から2週間以上たっているので、「最近相当期間の価格」とはいえない |
| 売り始めて3週間のうち、元値で売ったのは通算13日 | 過半でも通算2週間未満なので、「最近相当期間の価格」とはいえない |
あなたの場合は?
最近「〇〇%オフ」につられて買ったもので、元値がなければ買わなかったと思うものはありますか?
答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。
覚えるのはこの3つ
- 値段の高い安いを決める基準の値段が参照価格。セールの「元値」は参照価格になり、値引き後を得に感じさせる
- 根拠のない元値を示す二重価格表示は、景品表示法の不当表示に当たるおそれがある(過去の値段なら8週間の過半などが目安)
- 買うかどうかは、元値との差ではなく、今の値段を払ってでも必要かで決める
TERMSこのレッスンの用語
値段が高いか安いかを判断するときに基準にする値段。ふつうの値段の感覚や、示された元値などがなる。
物そのものの価値とは別に、払う値段を参照価格と比べた「お得さ」から感じる満足。参照価格より高いと不満にもなる。セイラーが提案した考え方。
販売価格に、それより高い過去の値段や希望小売価格などを並べて示す価格表示。
LESSON 5-4 の確認
確認問題(全3問)
本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。
Q1. セイラーの浜辺のビールの質問で、高級ホテルと古びた食料品店とで払ってよい額が変わったのはなぜですか。
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正解: 2. 買う場所によって「ふつうの値段」の感覚、つまり参照価格が違ったから
浜辺で飲むビールは同じでした。違ったのは、その店ならこのくらいという参照価格です。味の違いではない点が、ここがポイントです。
Q2. 消費者庁の価格表示ガイドラインで、過去の値段を「当店通常価格」として示すときの一般的な目安に合うものはどれですか。
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正解: 2. セール開始前の8週間のうち、半分を超える期間その値段で売っていた
目安は8週間の過半です。ただし過半でも、通算2週間未満などの場合は「最近相当期間の価格」とはいえないとされます。
Q3. 家に使える電気ケトルがあるのに、店で「通常価格6,000円→3,000円」のケトルを見つけました。この講座の考え方に合う判断はどれですか。
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正解: 2. 元値を隠し、3,000円を払ってでも今これが必要かで決める
使えるケトルがあるなら、買えば3,000円の出費が増えるだけです。元値との差ではなく、今の値段と必要性で考えるのがポイントです。